クローズド・サーキット

クローズド・サーキット作品はモニタなどの再生装置だけでなく,カメラなどの映像を生成するデバイスがインスタレーションのなかに組み込まれる。それによって鑑賞者は,カメラの被写体としても撮影され,鏡の回廊のように,鑑賞者自らの姿がモニタのなかに映し出される。展示空間のなかのテクノロジーを介して,見る−見られるという行為が閉じた回路として経験されるのである。ナムジュン・パイク,ブルース・ナウマン,ダン・グレアム,飯村隆彦らがクローズド・サーキットのインスタレーションを制作したほか,中谷芙二子《卵をたてる》(1974),山本圭吾《ビデオゲーム・五目並べ》 (1973)など,初期のビデオアートに散見される。
1990年代以降になると,ポール・サーマン《テレマティック・ドリーミング》(1995)のように,新たな通信機器やネットワークを介したうえで,クローズド・サーキットを構築する試みが行われている。このインスタレーションでは2つの離れた部屋のベッドの上をモニタで撮影した映像がISDN回線を通して転送され,お互いの映像が相手の部屋にプロジェクターで投影されるのに対し,自分の部屋のモニタに自らの映像が映し出される。

最近では津田道子《あなたは、翌日私に会いにそこに戻ってくるでしょう。》(2016年)のように,鏡,スクリーン,額縁が空間に配置されるなかにカメラが設置され,それぞれに投影されたりされなかったりするイメージが非同期的に展開することで、通信回路の時間性を意識させる作品もある。

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