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山本あいみさん 3/4

3. 教員生活

美術教員4年目

interviewer高校での美術の授業について教えてください。

山本 授業内容は油絵を中心に取り組んでいます。1年生では静物画、2年生では自画像、3年生では自由テーマで油絵を描きます。デッサンや色彩構成にも取り組みます。立体物を作るのが好きな生徒が多く、この間取り組んだクレイアニメは特に楽しんでやっていました。

interviewerクラブも持っておられるんですか。

山本 はい、美術部を持っています。

interviewer芸術系の大学への進学希望の子はいますか。

山本 いますよ。全体的にはデザインに進みたい子が多いように思います。高校生はデザインが一番身近というかイメージがしやすいようです。

interviewer生徒に、御自身が漆工の作品を作っていたお話しをされることはありますか。

山本 自己紹介の時に、私は美術の先生だけど大学で工芸を学んでたんだよっていう話から始めて、漆って知ってる?と聞いたりしますね。生徒もお椀などは身近にあるからちょっとはイメージできる部分もあると思います。でも、この話をするのは1年生の一番最初だから、みんな緊張しているし、反応できずにしーんとなってしまいます。でも、話に触れる程度でもしておくと、生徒の将来の選択肢を広げてあげられるかなと思います。芸大にいったら美術だけではなくて、工芸という手仕事を学ぶ世界もあるんだよって。

interviewer先ほど前に立つイメージがないままに教員になったと言われましたが、大学を卒業してすぐに教員になられたのですか。

山本 すぐです。いきなり教員になったので、1年目は本当に苦労しました。

interviewer一人で友人や知人のいない初めての土地で教員をされているわけですよね。どうやって乗り切りましたか。

山本 同僚の先生方に助けていただきました。アドバイスをいただいたり、悩みを聞いてもらったり、本当にかわいがっていただきました。

interviewer一度教壇に立ってしまうと、やることがどんどん来ますよね。

山本 授業も手探りでしんどかったんですけど、部活もあるし、あれもこれもでとにかく目の前のことに追われていました。2年目からはいろんなことに慣れてきて、少しだけ余裕ができました。

良い指導者との出会い

interviewer乗り越えることができた理由はどの辺にありましたか。

山本 これもまた人との出会いなんです。私はつくづく人との出会いに恵まれているなあと思っているんです。私の指導を担当してくださった先生がとても優秀で人間的な魅力にあふれる方で、とても厳しく優しく1から10まで美術の授業について、教員の仕事について、教えていただきました。出だしでつまずきそうな時期にその先生が支えてくださった部分は大きいと思います。

interviewerその先生からは、授業方法以外にどのようなことを教わりましたか。

山本 生徒の叱り方とか、教師は足で稼ぐということですね。頭で考えているだけでは意味がなくて、何事も実践あるのみだということを学びました。

interviewerかつて教えられる側だった山本さんが、卒業されてすぐに生徒と一期一会な時間を過ごしているんですね。

山本 はい、生徒が学校で過ごす時間は3年間だけです。3年間をより良く過ごすためのお手伝いができたらいいなと思っています。

教える立場・教えられる立場

interviewer振り返ってみて、京都芸大で受けた教育は高校の教育現場に生かせる部分はありますか。

山本 大学での手放しの教育の仕方が、高校の教育の現場で生かせるかというと、正直生かせる部分は少ないかなって思います。高校はそれでは成り立たないじゃないですか。美術に興味のない子にも筆を取らせる必要があるし、手放しにはできないですからね。

interviewerでも、大学と高校の違いは、その手放し感が一番大きな違いでしょうし、そこはあらかじめ高校生に知っておいてもらった方がいい気がします。

山本 たしかに、大学では自立していないと前に進めないよということは分かっておいた方が良いですね。

 京都芸大では、学生のやりたいように自由にさせていただきました。その分、自主性がないと先生方から学ぶ機会がつくれないという環境でした。今思えば、自分からもっと積極的に先生に教えを乞うべきだったなと感じています。自分自身に漆のことをもっと知りたいとか制作についてもっと意見がほしいとか、そういう気持ちがある状態で制作現場にいれば、作家としても一流の先生から高いレベルのことを学べたんだと思うんです。先生は聞けば何でも教えてくれますから。私自身がそういう意欲を持つレベルまで達していなかったがために、制作について自分から先生方にご意見をいただくことも少なかったことが、とても心残りなんです。

インタビュアー:美術学部 総合芸術学専攻2回生 濵野志織
(取材日:2012年3月3日)

Profile:山本あいみ【やまもと・あいみ】高校教諭

2009年3月京都市立芸術大学美術学部工芸科漆工専攻卒業、4月から京都府の北部にある府立高校の美術教諭として勤務。