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池田精堂さん・西條 茜さん

多方面で活躍する卒業生に,本学の思い出や現在の活動についてお話を伺う「卒業生インタビュー」。今回は2020年度の京都市芸術文化特別奨励者に選ばれたお二人を特別に同時インタビュー。在学時をよく知る陶磁器専攻の森野彰人教授がお話を伺いました。

今までの工芸のイメージとは違う物が京都芸大では作れると思った

西條 茜さん

interviewer京都芸大に入学する前,どんな子どもでしたか?

西條 私は幼い時,絵本を作るのが好きでした。自分でお話を作って,絵を書いて,冊子を作り,本棚に並べて遊んでいました。あと,阪神淡路大震災で祖父母の家が倒壊して,家を取り壊したのですが,その敷地で庭を掘り返すことが好きでした。祖父母が使っていたお茶碗の破片やガラスが出てくるんです。そうやって一人発掘ごっこをして遊ぶのが好きでした。あれが今の作品や作風に繋がる原体験だったのかなと,今では思います。

interviewer京都芸大を受験しようと思ったきっかけは?

西條 中学高校は美術系の学校ではなかったのですが,中学2年生の時から,工作教室に通っていました。その教室の先生が芸大出身の方で,「あなたいいかもね,京都芸大目指してみたら?」と仰っていただいて,高校生の時に本格的に予備校に通い始めました。私には,スポーツも勉強もできる姉がいて,その時は,何か勝てるのもがないか,褒めてもらえるものがないかと一生懸命で,それが原動力となっていたと思います。しかしそれ以外は基本的にずっと遊んでいましたし,カラオケしたりプリクラとったり普通の女子中高生でした。

池田精堂さん

池田 僕はもともと美術の道に進む気はまったくなく,高校は普通科の公立学校でした。一応大学受験もしましたが,やりたいこともわからなかったので,大学に行く気はあまりなかったです。一方,モノづくりには興味があって,将来は車の整備士などもありかなとか考えていました。結局,高校卒業後は2年間フリーターをしていました。バイトでは,テレビの工場ラインで出稼ぎ外国人と一緒に,何かわからない部品にひたすらシールを貼るという作業をしたりしていました(笑)。

interviewerどうしてモノづくりに興味があったのでしょうか?

池田 小さい頃,父によく美術館や博物館に連れていってもらった影響があると思います。テレビを観ていても,パソコンで作業をしている人より,工芸の人が木を彫っていたり,彫刻家がでかいものを作っていたり,そっちの方が楽しそうで面白いなって,幼い時から感じていました。

interviewerどうしてそこから京都芸大に行こうと思ったのでしょうか?

池田 フリーターを続けていて,これはきりのない生活だなと感じていました。だから,ここでもう一回頑張って,今進んでいる道を変えないと,と思ったんです。そんな中,芸大という選択肢を思いついて,試しに予備校で体験授業を受けてみたら,そこには今までの生活では触れてこなかったいろんなもの,モチーフがあったり,絵具があったり,素材があったり・・・本当に楽しいなと思いました。調べてみると,京都芸大では僕が今まで思っていた工芸のイメージと違う物が作れるということが分かりました。少人数で,入学後も選択の余地が広いということもわかり,本格的に受験スイッチが入りました。

専攻に縛られず,自由な制作ができた

interviewer実際に京都芸大に入学してどうでしたか?

西條 私は入学してカルチャーショックを受けました。中学高校までは,カラオケやプリクラなどフォーマットとしてあるものを使って遊んでいた。けれど私の周りの京芸生は,お金とか環境とか,制約がある中でも自分で知恵を出して,やりたいことを楽しみながら実現していく人が多くて,当時は衝撃を受けましたね。そんなことを私もしたい!と思い,初めて課題以外で自分のやりたいことをやり始めたのが,学外でのツリーハウスの制作です。大原野の山のおじさんと仲良くなって,材料を調達したり,人を集めて,資材を運ぶ手順や,工具の使い方など考えてやっていくのがすごく楽しかった。

池田 僕は入学当時,その時の4回生と同じ年齢だったこともあって,総合基礎実技よりも,先輩の制作を手伝う時間の方が楽しかったです。でも今振り返ると,総基礎で専攻まぜこぜのメンバーでやっていたのが,よかった部分もあったと思います。すぐに専攻に分かれてしまうと,同じ学年なのに一生交わらない人も出てしまいますし。あとは,今後二度とやらないようなことができるのは,経験としてよかったです。僕の時は銅版画や竹を使ったグループワークがあったのですが,何年も後になって,先輩の制作を手伝ったときに,その時の経験が活きたときもありました。

interviewer大きな大学だと,どうしても専攻だけで人数が大きくなるから専攻内で固まるけど,京都芸大は1学年130人ぐらいだから,専攻や学年に関係なく集まりますよね。

池田 京都芸大は男子学生が少ないこともあって,男子は専攻も学年も関係なく仲良くしていました。同じジャンルで競るということがなく,別の分野でぽつぽつとわが道をゆくやつらが集結していたように思います。他分野でも活躍している友人がいたら,自分も頑張ろうというモチベーションに繋がりました。そこは京都芸大のいいところだと思います。

interviewer西條さんはなぜ陶磁器専攻を選んだのでしょうか?

西條 私は,道具を使わずに自分の手だけでも作っていけるというところが陶磁器の魅力だと思いました。あとは,上田順平さんの作品を大学展示で観て,それが自分の思っていた陶芸のイメージと違って「かっこいい」と思ったのもきっかけです。陶磁器でこんな自由なことができるんだ,って。

interviewer池田さんが彫刻専攻を選んだ理由は?

池田 実は1回生の時は「構想設計基礎」を選択していました。その授業ではハイパーテキストで作品を作るという課題があったんですけど,ようやく完成したものが,何故かサーバー上で消えてしまったんです。積み重ねたものがいきなりゼロになって,本当にショックで。フォーマットや技法を否定をするわけではないんですけど,「これは自分にはあわない」と思いました。一方,彫刻などは,物を作ると,燃やそうが灰として残るし,石だと恒久的に残る。この手ごたえが重要なのかなと感じて,彫刻専攻に進むことを決めました。

インタビュアー:森野彰人(陶磁器専攻教授)
(取材日:2021年2月19日・本学 大学会館交流室にて)

Profile:池田精堂 【いけだ・せいどう】

1985年生まれ。京都市立芸術大学大学院美術研究科修士課程彫刻専攻修了。2012年ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(イギリス)へ交換留学。京都を拠点に活動パフォーマンス/コンテンポラリーサーカスユニット「tuQmo」代表として活動。また,フリーの美術インストーラーとして,国内の美術館やギャラリーにて展覧会の企画・造作物制作・設営等に携わっている。

Profile:西條 茜 【さいじょう・あかね】

1989年兵庫生まれ。京都市立芸術大学大学院美術研究科修士課程工芸専攻(陶磁器)修了。2013年ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(イギリス)へ交換留学。「空洞」でありながら「リアリティのある表面」という陶磁器の特徴に着目する一方で,世界各地にある窯元などに滞在し,地元の伝説や史実に基づいた作品を制作している。