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松田洋介さん 4/4

4.古楽器サクバットとの出会い

古楽器「サクバット」を通しての出会い

interviewer_music関西フィルのプロフィールのページに「サクバットを用いた演奏活動」と書いてあったのですが、サクバットはどんな楽器ですか。

松田 サクバットは現在のトロンボーンの原型になる古楽器です。トロンボーンと構造は一緒なので、音もトロンボーンとほぼ同じ様な感じですが、ずいぶんサイズが小さいので音量が小さいですね。現在のトロンボーンより優しい感じの音がすると思います。

interviewer_music古楽器は、学生時代にはなかなか出会わないと思いますが、どこでサクバットに出会ったのでしょうか。

松田 高校生の頃に古楽器アンサンブルのCDを買った時に知りました。そのCDは、吹奏楽部で演奏する機会があったG.ガブリエリの曲が収録されたCDで、G.ガブリエリは、2012年に没後400年を迎えた16世紀の作曲家なんですね。こんなに古い時代の曲を当時の楽器、古楽器で演奏していることを知って、ぜひ聞いてみたいと思って買ったんです。サクバットと木管コルネットで演奏されていて、その優しい音色が随分と気に入ってしまいました。それで、僕はずっと「吹いてみたいな」という気持ちを持っていたんです。

interviewer_music実際に手にされたのはいつ頃ですか。

松田 自分のサクバットを手にしたのは数年前ですね。譲っていただける方に出会って、話に飛びつきました。念願のサクバットを手に入れることが出来てとても嬉しかったです。きょうと金管五重奏団で一緒に吹いている先輩の織田貴浩さんも僕より少し前にバスサクバットを手に入れていて、二人で大喜びしました。「他にも演奏する人がいないか、どこかで演奏できる機会はないか」と話していたところに、偶然にも、パリで活動していた、アンサンブル・プリンチピ・ヴェネツィアーニという古楽器の演奏をされる団体が、日本に活動拠点を移すということを知ったんです。

interviewer_musicサクバットを手にしたことで、人の輪が広がったんですね。

松田 本当にタイミングがよかったです。僕がサクバットを買って2ヶ月後ぐらいに、その団体の上野訓子さんと笠原雅仁さんと知り合えたんです。「ぜひとも一緒に演奏させてください」とご挨拶して以来、多くのことを学ばせていただきながら演奏活動をしています。

 実は高校の時に手に入れたCDで演奏した方にお会いする機会もあったんですよ。

 サクバットを手に入れたことで、人との新しい繋がりができて、演奏活動の幅も広がりました。サクバットが良い人間関係と経験をもたらしてくれています。

interviewer_music最後に、これからの夢を聞かせてください。

松田 もっと楽しく演奏ができるように、練習を積んでいきたいですね。関西フィルの一員としてはもちろんですが、吹きたい曲もたくさんあるので、アンサンブルの活動もどんどんやりたいです。

 それから、今は、地元の高校の吹奏楽部などでトロンボーンパートのレッスンをする機会が少しあるだけですけど、自分が人に楽しく教える余裕が出てきたら、後輩にトロンボーンを通じて音楽の楽しみを伝えていければいいなと思っています。

京芸生と未来の京芸生へのメッセージ

松田 京都芸大では、同じ志を持ったたくさんの友人と一緒に、演奏会から芸大祭や演奏旅行などの行事を楽しみながらひとつのものを作り上げる経験ができます。その経験を共にした友人とのつながりが、卒業後も音楽活動の幅を広げてくれますし、何より僕にとって、自信が持てない自分と向き合っているときに悩みを打ち明けられる友人を得られたことは非常に大きな財産です。だから、在校生のみなさんは、音楽に限らず友人といろんなことを思いっきり楽しんで経験を共有してください。そして、これから入学される未来の京芸生は、そういう友人ができるのを楽しみにしていてください。

 自分の経験からのアドバイスですが、音楽をやっていると誰でも、何かしら気力が下がったときに、練習の仕方が悪いとか実力がないとか、自分自身を否定してしまいそうになるときがあると思うんです。そういうときは、京都芸大を目指した初心や今までの自分の練習や勉強の積み重ねがあることなど、自分が前向きになれる部分を探してみてほしいです。

 僕の場合は、良く考えて工夫をしたたくさんの練習が自信につながりました。相変わらずあがり症の僕ですが、「できる」と思えるようになるまで練習して本番を迎える、毎日がその連続です。

インタビュー後記

インタビュアー:音楽学部 管・打楽専攻 1回生 景山須美子
(取材日:2012年11月8日)

 インタビューを通じて、松田さんは「とにかくトロンボーンが大好きで音楽が楽しい!」と思っていらっしゃることが強く伝わってきました。お話の中で幾度となく「練習」という言葉が出てきて、真摯に練習を積み重ねておられる姿勢に感銘を受けましたが、よく考えて工夫した練習がとても大切だということ、練習が自信につながること、そして大丈夫だと自分に言い聞かせ、前向きに考えることが良い結果に結びつくのだと教えていただきました。

 笑顔で楽しくトロンボーンのお話をしてくださる松田さんから、あがり症に悩まれていたことを聞いたときにはとても驚きました。でも、自分に正面から向き合って弱点を克服されたことで、中学生の時からのオーケストラの一員になるという夢を叶えられて、努力することの大切さを改めて感じました。

 私も普段から緊張する方で、なかなか自信が持てないのですが、「音楽が好きで、音楽を勉強したい」と思って京都芸大に入学した初心を忘れずに、自分を否定しそうな時も前向きになれる道を探したいと思います。そして、日々努力されている松田さんを見習って、自信が持てるようになるまで練習を積んで、楽しく演奏することを目指して精進していきたいと思います。

Profile:松田洋介【まつだ・ようすけ】関西フィルハーモニー管弦楽団トロンボーン奏者

京都市立芸術大学音楽学部卒業、大学院音楽研究科修了。学部卒業時に音楽学部賞、京都音楽協会賞を受賞。ドイツ国立ミュンヘン音楽大学(Meisterklasse)卒業。トロンボーンを呉信一教授、Prof.Wolfram Arndtの両氏に師事。2010年9月より、関西フィルハーモニー管弦楽団トロンボーン奏者として入団。

オーケストラ以外でも、きょうと金管五重奏団、アンサンブル・プリンチピ・ヴェネツィアーニ(古楽アンサンブル)の各メンバーとして、トロンボーンとサクバットを用いて様々な演奏活動をしている。