河内仁志さん 3/4

卒業してから

１年間の留学が終わって帰国したとき，将来に不安はありませんでしたか。

河内　それはありましたね。何をしようかすごく迷いました。とりあえず生活をしていくためにアルバイトをしようと思って，色々なアルバイトをしましたね。披露宴会場のボーイさんや訪問販売などもやりました。「そういう仕事に進んだ方が良いのかな。」と思うぐらいに頑張っていました。でもそういうアルバイトをしているときも，家では欠かさず練習していましたし，コンサートにも出演していました。

フランスから帰ってきた後，京都芸大の先生に見ていただいたことはありますか。

河内　以前は，時々見ていただいたこともありました。でも今は一人で練習しています。学生のときに，先生から「卒業したら一人でやりなさい。」と強く言われていましたので，学生のときから「卒業したら一人で出来るようにならないといけない。」という意識をしっかり持って練習していましたし，それまでに先生には，すごくたくさんのことを教えていただきました。本当に基本的な事からしっかりと教えていただいたので，今でもそれを思い出しながら練習しています。

卒業してから感じた京都芸大の良い所は。

河内　自然に囲まれていることですね。すごく気持ちが良くて，練習の疲れも癒されます。

　あと，大学全体が，アットホームなところですね。上下の繋がりも多いし，専攻・学年を問わず交流があるので，違う専攻の子と一緒に組んで演奏したりセッションしたりしていました。卒業してからもそういう繋がりはずっと続いていきますし，本当に大事な繋がりだと思います。

　個性の強い先生がたくさんいらっしゃることも魅力ですね。今現在も，現役の演奏家として活躍されている先生ばかり。そういう方と触れ合うことができるのは，すごく良い勉強になりますね。

最近はどのような活動をされていますか。

河内　今は神戸市混声合唱団に所属しています。その活動の中で，神戸市の小学校を４年間で全て回るというプロジェクトがあって，それが始まったので，今はその活動で忙しくしています。具体的には小学校に行って，教えるというより，一緒に歌うんです。「合唱」というものをみんなに体験してもらって，ハーモニーの楽しさを感じてもらう授業をしています。あとは子どもたちにバイオリンを体験してもらうために，神戸室内合奏団の人と一緒にバイオリンを持って小学校に行って一緒に演奏をすることもあります。結構色々やっているんですよ。

学生時代から子ども達に音楽の楽しさを感じてもらうような活動をしたいという思いはあったんですか。

河内　当時は全然ありませんでした。たまたま，高校のときにお世話になったピアノの先生から，「今，神戸市混声合唱団のピアノの空きがあるから，受けてみないか。」と勧めていただいて，それがきっかけですね。でも，実際にやってみたら，子ども達と交流することってすごく楽しかったので，入団できて良かったなと思っています。今の活動をするようになって，こういったことはどんどん続けていきたいと思いましたね。「音楽を通して子どもたちに何か伝えることができたら。」と思っています。

今は，ソロ活動以外の取組もされていますか。

河内　最近はその方が多いかもしれません。神戸市混声合唱団に入っているから，歌や弦楽の人と組んで室内楽をやることもあります。この間もブラームスのピアノクインテットと，フランクのクインテットを，一回のコンサートで両方やりました。プログラムが決まったときは，「おおー，どっちも苦手や。」と思いましたが，色々みんなで意見を出し合ったりしてやっていたので，なんとか演奏することができました。

苦手な作曲家はいますか。

河内　ベートーベンが苦手ですね。曲は嫌いじゃないんですけど，自分で弾くことには「何かちょっと違う。」と感じます。自分には合わないというか。でも，あえて苦手なものに取り組むのは，すごく勉強になるし，それで評価をもらえたら，「苦手なものでも弾けるんだ。」と自信になります。だからこれからは，ベートーベンのように苦手としていた分野も積極的にやっていこうと思っています。

合唱団での演奏など，普段とは違う経験がソロ活動にも生きますか。

河内　それはそうですね。言葉にするのは難しいけど，感覚的に「あのとき室内楽を経験しておいて良かった。」と感じることはあります。だから，どんどん室内楽もやっていこうと思っています。

気分転換には何をされていますか。

河内　最近は弁当作りとか。流行りの弁当男子をやっています（笑）。料理をすることが好きなわけではなくて，食べることが好きなんです。食べるためには頑張って作ろうっていう。好きなものを好きなだけ食べているときは，ストレスが発散できて，気分転換になります。