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次田心平さん 4/4

4. 夢をみる

次田心平さん(左)とインタビュアーの三角顕史さん(右)

interviewer_music在学中のどういった経験が今に生きていますか。

次田 実技のレッスン,管・打楽合奏,オーケストラの授業もいい経験になりましたね。今のオーケストラでは,3日間リハーサル後に本番というサイクルで,長い期間をかけて同じ曲を練習することはできないんですね。大学時代に1曲を時間をかけて掘り下げていったこともすごくためになりましたね。

 管・打楽合奏では,チャイコフスキーやブルックナーなどオーケストラの曲を金管だけで練習していて,先生がその場で「こう吹くんや」って吹いてくれました。実際に先生に吹いてもらうのが一番勉強になるんですよね。この間,京都市交響楽団の岡本さん,小西さん,NHK交響楽団の新田さん,呉先生で組まれた「ハイブリッドトロンボーン」というアンサンブルの演奏会があって聴きにいったんですけど,日本のトップの演奏家と共演しても,呉先生はすごくいきいきしていて,むしろリードしている感じで驚きました。京都芸大は,本当に先生が良いですよね。

 あと,京都芸大は,関東の音楽界では少数精鋭のイメージがあります。僕の一つ下の世代は,すごく優秀で,管楽器が4人だったのですが,トランペットは,菊本和昭さんがNHK交響楽団ですし,トロンボーンだと玉木優さんが東京佼成ウインドオーケストラ,ホルンでは,水無瀬一成さんが京都市交響楽団で,4人中3人がオーケストラに入って活躍しているんですね。1学年に金管楽器が4人しかいないという学生の少なさも珍しいようですが,そのうち3人がオーケストラに入って活躍しているという,活躍している人数の多さにも驚かれます。

 でも最近,関東でも京都芸大出身の演奏家が増えてきていて,今練習しているオペラでも,声楽専攻の出身の方がいらっしゃって,「久しぶり」と声をかけられて驚きました。どの世界でもそうだと思うのですが,音楽の分野も人のつながりはすごく大切で,京都芸大のつながりは,今の活動に生きています。

 あと,教授陣が日本を代表する演奏家でよく知られているので,「呉先生は元気にされていますか。」とか先生の話がきっかけで盛り上がることもよくありますね。

 菊本さんとは,今度も東京で一緒にアンサンブルしますし,水無瀬さんとも関西で一緒にアンサンブルしましたね。呉先生の中心になっているアンサンブル「ジャパンブラス」にも出演させてもらいました。

interviewer_music恩師との共演はいかがでしたか。

次田 ジャパンブラスといえば,関西でものすごく人気のあるコンサートで,僕も京都芸大にいた時は何回も聴きに行っていました。自分がそこに出してもらえるなんて夢にも思っていなかったから,嬉しかったし,楽しいですよね。幸せというか。呉先生に,僕が今所属している読売日本交響楽団に出演してもらった時もそうでした。

 ジャパンブラスの時に,呉先生が「自分の教えた子がこんなにいっぱい活躍していて共演しているっていう状況が嬉しい。」っておっしゃっていました。自分が教えてきた子達がプロの演奏家になっているのを実際目で見て,耳で聴いて,一緒にやることができるっていうことは感無量でしょうね。

interviewer_music今後,やりたいことはありますか。

次田 音楽をやりたい子が減っているように思うので,自分のやりたいことをやり続けて,その演奏やCDなどを聞いて音楽をやりたいと思う子が増えてくれればいいなと思います。

interviewer_music次田さんにとって音楽とは。

次田 あって当たり前のもの。なくては生きていけないですね。

interviewer_music京都芸大を志す受験生へ一言,お願いします。

次田 京都芸大は人が多すぎないところが良いですね。一人ひとりがのびのびと育つ環境があると思います。先生方やスタッフにも素晴らしい人がいっぱいです。一人ひとりに目が届きますし,チャンスも多いです。自由な校風も僕は気に入っていました。

interviewer_music在学生にも一言,お願いします。

次田 現在,関東の大学や高校で学生を指導しているのですが,最近の子はすごく現実的なように思います。世の中の流れもあるのかもしれないですが,自分で勝手に線引きをしてしまっている。

 学生時代は,もっといい意味で勘違いしても良いと思います。まわりは,うまくいかないと思っていたとしても,絶対に実現するんだと自分を信じてほしいです。先のことを現実的に考えるんじゃなくて,もっと夢を見て,勘違いしてもいいから,四年間,必死にその勘違いを実現させる努力をしてほしいですね。

インタビュー後記

インタビュアー:三角顕史(管・打楽専攻修士課程2回生)

※ 取材日:2013年11月7日。日生劇場にて

 今回のインタビューで,自分の師である次田心平さんが音楽に向けている考えをより知ることができました。またその中で音楽を楽しもうとしている姿勢を感じ,尊敬の念がより強くなりました。

 オーケストラ以外でも侍ブラスをはじめとするアンサンブルやスタジオミュージシャンとしてクラシック音楽以外の現場で活躍しており,そのような活動をすることになるきっかけとなったことに関するお話も興味深かったです。

 そして次田先生の師である呉先生,武貞先生の指導を受けることのできる立場に自分がいることを大変ありがたく思います。

 お話をしている中でとても印象に残ったのはとにかく自分を信じ,がむしゃらにがんばるということの大事さです。確かに私たち音大生は自分の将来に関して不安を抱えている人は少なくないと思います。しかし,その中でも一日一日に全力で打ち込むことで少しずつ未来が見えてくるのだと思います。今回のインタビューで自分の意志を貫くためのエネルギーをたくさん頂いたように感じます。

私も音楽家として少しでも早く師に近づけるよう,一層励みたいと思います。

Profile:次田心平【つぎた・しんぺい】読売日本交響楽団 チューバ奏者 

京都市立芸術大学音楽学部管・打楽専攻卒業。

1999年PMF(パシフィック・ミュージック・フェスティバル)にジュニアフェローで参加し,ケネス・エイミス氏に学ぶ。2000年カナダにて国際テューバコンクールのセミファイナルに出場。その後,インディアナ州立大学の教授ダニエル・ペラントウーニ氏の自宅にて数週間教えを受ける。2001年PMFに正式メンバーとして参加。同年,第18回日本管打楽器コンクールテューバ部門第4位,第21回同コンクール3位と続けて入賞。2002年,大学を首席で卒業し音楽学部賞,京都音楽協会賞を受賞。読売新人演奏会に出演。2003年~2008年,日本フィルハーモニー交響楽団に在籍。第24回日本管打楽器コンクール,テューバ部門において満場一致の1位となる。日本フィルハーモニー交響楽団をバックに協奏曲を共演。侍ブラス,ジャパンテューバソロイスツ,Break Throughのメンバーとして,演奏活動を展開するほか,関東の大学,高校で後進の育成にも力を注いでいる。