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浦山瑠衣さん

1.幼少から京芸時代

「紀尾井ホールにて(平成26年)」

interviewer_musicピアノを始めたきっかけは何ですか。

浦山 両親がすごく音楽が好きで,家の中はいつも,レコードから流れるジャズやラテン音楽,そしてクラシック音楽で溢れていました。娘の音楽で晩酌を,というのも両親の夢だったそうです。(笑)ピアノを始めたのは,4歳の時に両親に音楽教室に連れていってもらったことがきっかけです。もともと人前で歌ったり踊ったりすることが好きだったので,ちょっとピアノが弾けるようになったら,みんなの前で弾いてみせて,「上手だね」と言われるのが嬉しかったです。音楽教室では,最初は映画音楽や好きなアニメの曲を弾かせてもらっていたので,自然とピアノが好きになって,楽しく続けてきました。

interviewer_music音楽の道に進もうと考えられたのはいつ頃ですか。

浦山 小さい頃からディズニー映画の音楽が大好きで,ディズニーの音楽を作る仕事に就きたいと思っていたんです。それでピアノと並行して作曲を10年以上習っていました。転機となったのは高校一年生の時にたまたま出場したピアノのコンクール。予選落ちしてしまい,それが何故だか本当に悔しくて,その日から「今日から最低でも1日6時間は練習をする!」と決意したのを覚えています。真剣に向き合いだしてからはどんどん楽しくなっていきました。それからは本気でピアニストを目指して音楽の大学に行こうと決めました。

interviewer_music京都芸大に入ってからいかがでしたか。

浦山 入学式ですぐに友達ができ,学校の雰囲気も温かくて楽しそうで,京都芸大に来て良かったとすぐに感じました。

 大学生活にはすごく満足していました。一番の思い出は,芸大祭の時にピアノ科の同級生9人で,ラヴェルのラ•ヴァルスをピアノ3台18手用にアレンジして弾いたことです。毎晩,みんなで集まって練習して,音楽を作り上げていくことが楽しかったです。

interviewer_music学生時代に葛藤したことはありましたか。

浦山 将来のためにレパートリーを増やそうと,次から次へと新しい曲を弾いていました。バッハ,ベートーヴェン,ショパンの曲などピアニストが一通り弾いておかなければならないような曲は,ほとんど全曲弾いてみましたし,コンチェルト(協奏曲)も一通り弾いてみました。その甲斐あって,卒業する頃には本当にたくさんの曲を知っている状態になっていて,自分の理想に近づきつつありました。しかし,新しい曲ばかり弾いていたせいで,一つ一つの曲を人前に出せるようなレベルまでは仕上げられませんでした。自分がしたいことと,やらなければいかないことのバランスが上手くいかず,人前で弾きたくなくなってしまい,発表会のオファーをいただいても断っていたくらいでした。弾くこと自体が楽しくなってきたのは4回生になってからだったので,それまでは精神的にはきつかったですね。

interviewer_music上野真先生のレッスンで印象に残っていることはありますか。

浦山 上野真先生には,色々な方向から音楽を見ることの大切さを教えていただきました。先生はレッスンの中で,私の弾き方を決して「ダメ」とは言わずに,「浦山さんのやり方もありだけど,こういう方法もあると思う」と弾き方のアイディアを提供していただきました。常に一つ一つの音に意味を見出だしておられ,毎回のレッスンで先生の奏でる多彩な音色や,表現や知識の引き出しには感銘を受けていました。音楽と向き合う真摯な姿勢を学べたことがピアニストとして,そして人としての成長につながったと感謝しています。

 先生であると同時に一流のピアニストとして,素晴らしい芸術家像を求め続ける向上心にいつも尊敬の念を抱いていました。だから,先生からいただいたアイディアを全て吸収したくて,何でも楽譜に書いていました。また,先生は,よく昔の映画の話をしてくれたんです。「何か感じとれるはずだから」と,フランスやドイツのモノクロームの映画をおすすめしてくれました。練習の合間に見て,先生のおっしゃる美的感覚を掴もうとしていました。

「ラ•ヴァルス編曲中」

「平成22年度 卒業式祝賀パーティ」

インタビュアー:藤本志帆(ピアノ専攻4回生)・近野剛 (ピアノ専攻3回生)
(取材日:2013年12月11日)※スカイプでのインタビュー

Profile:浦山 瑠衣【うらやま・るい】ピアニスト

2011年,京都市立芸術大学音楽学部ピアノ専攻を京都音楽協会賞を受賞して卒業。在学中,定期演奏会のソリストに抜擢され大学オーケストラと共演。大学卒業後,渡米。現在,ボストン音楽院修士課程に在学中。2004年,第58回全日本学生音楽コンクール北海道大会高校生の部第1位。2005年,ピティナ・ピアノコンペティションG級ベスト4賞,2006年同コンペティション特級ファイナリスト。2007年,2012年ペルージャ音楽祭(イタリア)参加。2012年,ショパン国際コンクール(アメリカ・ハートフォード)第2位。2013年,ピティナ・ピアノコンペティション特級グランプリ。これまでに東京ニューシティ管弦楽団,リスト音楽院オーケストラ,ペルージャ管弦楽団,京都市立芸術大学管弦楽団と共演。