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木下敦子さん 2/4

2.ピアノで表現する

「ヒルデスハイム管弦楽団との共演」

interviewer_musicドイツへの留学はどういうきっかけだったんですか。

木下 卒業前に,椋木先生に相談して受けた公開レッスンで,現在教えていただいているマイスター先生に出会いました。椋木先生が「あなたに合うと思う。」と言われたとおり,とても論理的なマイスター先生の指導は自分に合っていると感じたし,先生の音楽性も興味深くて,2日間の短いレッスンでしたが,とても良い経験ができたんです。その帰り際に,通訳の方から,「マイスター先生が,興味があるなら,ドイツに受験しに来てもいいと言ってくださっている。」と声を掛けられました。

 さすがに,この機会を逃したらもったいないと思って,すぐ両親に電話しました。その時は,随分舞い上がってしまい,経済的なことも考えずに父に話したんですが,二つ返事で背中を押してくれました。椋木先生にもすぐ連絡したところ,「入試で使えそうな曲を整理しておいて。」とか,「マイスター先生のプライベートレッスンを申し込んでみて。」とか,色々準備することを教えていただきました。

interviewer_music留学はそれまで考えていなかったんですか。

木下 全然考えていなかったんです。両親も随分驚いたと思います。私もそんな話はしてこなかったし,自分の子が留学する心構えも全然なかったはずです。だから,反対するよりも「とりあえずやってみよう」という気持ちで応援してくれたと思います。

 両親は私が京都芸大を受験するときも,レベルが高いことや,音楽家として生きていく将来を懸念して,一般の大学に進んでほしい気持ちもあったようですけど,最終的には私のしたいことを応援してくれました。両親の支えがあってこそ,こうして音楽を勉強できるので,心から感謝しています。

interviewer_musicドイツ語には,苦手意識はなかったですか。

木下 最初は大変でしたね。ある程度基本が身に付いたら,間違ってもいいから話したいと思っていたので,苦にはならなかったです。6月に初めてドイツに来て,6月と7月にゲーテ・インスティテュートというところの語学教室のドイツ語初級コースに通って勉強して,7月に受験しました。英語は中高の時代に結構勉強していて,日常会話はできるレベルだったので,マイスター先生の事前レッスンでは,英語でレッスンしてもらっていました。

 学生生活が始まってからは,京都芸大で学んだような音楽史などもいくつか単位を取らないといけなくて,最初は授業についていくのがやっとでした。でも,室内楽で誰かと組むときは,ドイツ語や英語で話さないといけないから,言葉は自然に吸収できるようになります。レッスンでも,難しい言葉が出てきても,演奏をしながら説明されるから,ある意味予測して理解することができます。

interviewer_music現在は,マンハイム国立音楽舞台芸術大学のマスター課程を修了して,ソリスト課程に在籍しているんですよね。

木下 そうです。今の課程はレッスン以外に単位もなくて,練習に集中できています。ソリスト課程は,基本の4セメスターを2年間で学ぶところを,8セメスターの4年間に変更できるので,私はゆっくり勉強したかったので,8セメスターにしました。8セメスターにするとレッスンの間隔が2週間に1回になるんですけど,マイスター先生の門下は特別で,先生の奥さんにもレッスンしてもらえるんです。その方も素晴らしいピアニストなので,トータルではレッスンの機会が多いと思います。

 普通だったらレッスンが2週間に1回というのは少ないけれど,ある程度は自分で仕上げたものを先生に見てもらうようにすべきなので,準備の時間という意味で,2週間のサイクルは自分に合っています。

interviewer_music練習環境はどんな感じですか。

木下 レッスン室を予約するのが大変なんです。今は自宅にピアノがないので,大学で練習するしかないんですが,レッスン室の予約に,長いと一時間半も待たないといけないんですよ。京都芸大に自宅から通っていたときは,同じように朝早く大学に行って予約して,夜まで練習していたんですけど,途中から下宿したので,好きな時に練習できたので困ったことはなかったんです。今は,レッスンなどの合間に時間が空いたとしても,すぐ練習できないのが難点です。

 ただ,学校が,一旦夜の9時半に閉まったあと,10時から,もう1回地下のレッスン室を使う人だけは入れて,朝の6時まで練習できるんです。さすがに6時までは残らないですけど,本番が近いときは,ほぼ毎日,夜に大学に行きます。

interviewer_music私もフライブルグに留学しているときは同じような環境で,夜中に大学にいるのが,日本人とか,アジア人ばっかりになっていました。

木下 そうそう。そこでグループが出来て,「昨日の夜はなんで来なかったの。」と聞かれたりするんですよね。妙な団結力が生まれます。

interviewer_music普段は,どこかに遊びに行ったりする時間はありますか。

木下 学期中はないです。平日はレッスンや合わせの練習で埋まってしまいます。平日に思うように練習が出来ない分は,土日にまとめて練習しています。遊ぶ時間は,取ろうと思えば絶対取れるんですけどね。

 私は,やることがたくさんあるのに,気分転換に何かしてしまうと,後悔することの方が多いし,レッスンや本番に仕上げられていないことが嫌なので,ずっと練習している方が気持ちが穏やかです。でも,一日フリーの日があったら寝ていたいかな(笑)。

「現在の師匠マイスター先生と」

「リー先生と」

インタビュアー:泉麻衣子(博士課程器楽領域ピアノ専攻3回生)
(取材日:2013年12月6日)※スカイプでのインタビュー

Profile:木下 敦子【きのした・あつこ】ピアニスト

1987年 神戸市生まれ。京都市立芸術大学音楽学部卒業。

卒業後,ドイツのマンハイム国立音楽舞台芸術大学に留学し,マスター課程を最優秀の成績で卒業,現在ソリスト課程に在籍。

「第41回 東京国際芸術協会新人演奏会オーディション」 最優秀新人賞受賞。「第8回 宝塚ベガ学生ピアノコンクール」 第3位。「第10回 大阪国際音楽コンクール」 エスポワール賞受賞。「2011年ドイツ バーデン・ビュルテンベルク州ベヒシュタイン学生ピアノコンクール」 第2位。「2012年フランス ニース国際ピアノコンクール」 第1位。「2013年オーストリア ブラームス国際コンクール」 第1位。

ヒルデスハイム管弦楽団,カンヌ管弦楽団,バーデン・バーデン管弦楽団との共演にてソリストを務める他,ドイツ各地にてリサイタルを開催。ソリストとしてのみならず,リート伴奏や室内楽,ピアノデュオなど多岐に渡り活動する。また,Y.Menuhin財団奨学生として高齢者施設や病院など,さまざまな環境での演奏にも力を入れている。現在同大学で声楽科の伴奏助手を務める。マンハイム・ライオンズクラブ,ソロプティミスト奨学生。これまでにピアノを真鍋公子,菊地葉子,椋木裕子,Rudolf Meister,Ok-Hi Leeの各氏,リート伴奏をHeike-Dorothee Allardt,Ulrich Eisenlohrの各氏に,副科チェンバロを中野振一郎氏に師事。

その他にAndrzej Jasinski,Klaus Schilde,Jean-Pierre Armengaud 各氏のマスタークラスを受講。