閉じる

共通メニューなどをスキップして本文へ

ENGLISH

メニューを開く

白子正樹さん 4/4

4.今の夢


札響POPSコンサートでの共演

interviewer_musicオーケストラ奏者として,失敗した経験はありますか。

白子 演奏では,たまに間違えたりするんですけど,自分で大きいと思うミスというのは…まだないかなぁ…。

 演奏中のミスは誰にでもあります。ミスを恐れていたら演奏できなくなるから,いちいち気にしたりしない!自分にのめり込みすぎると,ミスも多くなっちゃうので,ある程度,冷静さを保ちながらやる必要があるんですけど,そのバランスがすごく難しいです。

interviewer_music気分転換に何かされていることはありますか。

白子 旅行が好きだから,休みを取って海外に行って,音楽のことを一切考えないようにして自分をリフレッシュさせています。ケルンにいた時にも,バカンスのような休暇をたくさん取りましたよ。他にもおいしいものを食べたりして気分転換しています。

 今までは,「毎日何時間は絶対練習する」という厳しさは必要だと思っていました。それはとても大事なことなんですけど,音楽から離れて見えてくるものもあるんですよ。音楽以外の刺激が音楽に結びつくことも多々あるから,そういうふうにしてみるのもありかなと思っています。

interviewer_musicどんな時に,オーケストラ奏者になって良かったと思いますか。

白子 それは,やっぱり良い演奏ができた時ですね。オーケストラは,一人ではできない音楽だから,同じ曲でもメンバーが変わったり,指揮者やソリストが変われば,全然違うものになる。演奏がうまくいくと「なんでこんなにうまくいくんや!」と思えてもちろん楽しいし,うまくいかない時でも,何が悪かったんだろうと分析したりするのも楽しい。オーケストラにはいろんな人がいるから,そういう人たちと演奏できて面白いなって思います。

 自分がエキストラとして演奏していた時とは違い,今はオーケストラ奏者として仕事をしていますが,それを当たり前のことと思わないように,常に一生懸命に演奏しようと心掛けています。子どもたちへの演奏会でも頑張って演奏すれば,子どもたちも反応を返してくれます。そういうことも楽しみのひとつですね。

interviewer_musicオーケストラ奏者になるという夢を叶えられた今,次の夢はありますか。

白子 これからも誰かを感動させるために演奏していきたいと強く思います。そして,そのためには自分が一番感動していなければいけないと思っています。

 また,自分が学んできたことを若い人たちに還元したいと思っています。ドイツでは,「日本人は音楽に関しては技術しかない」と言われることがあるんですけど,僕が若い人たちにアドバイスすることによって,表現の面でも何かヒントをあげられたらいいなと思っています。そのために,自分の音楽をもっと深く追求していきたいと思っています。

interviewer_music受験生に向けてメッセージをお願いします。

白子 先を見据えた目標を立てて,とにかくそこに向かって努力してください。それを実現するためにどれだけエネルギーを注げるか,気持ちが強ければ強い程,その目標に近づけると思います。自分の目標を早く見つけ,そのためにエネルギーを注いでください。自分に必要なものを見つけて掘り下げて,掴んでいくことができる人が,夢をどんどん実現できるんだと思います。自分の将来を考える上で,京都芸大はすごく良い大学です。その魅力を感じて是非,頑張ってください。

interviewer_music在学生に向けてメッセージをお願いします。

白子 せっかく京都芸大に来ているのだから,自分が今いる環境を最大限に利用して勉強してほしいと思います。よく「若い時にしかできないから好きなことをする」と言うけど,僕は,若い時にしかできないことは,たくさん勉強することだと思っています。勉強していろんなことを吸収するんです。京都芸大の学生はみんな自分を持っているから大丈夫だと思いますが,自分が考えていることを決して否定しないでください。自分の中にあるものをまず受け入れて,その声に従ってください。そうすれば,この先の自分に必要なものを,もっともっと吸収していけると思います。京都芸大は,そういうことができる大学だと思います。だからこそ,素直な心とともに,学生生活を送ってください。

インタビュー後記

刀田大生(音楽学部 管・打楽専攻 4回生*取材当時の学年)

 今回白子さんのインタビューをさせていただき,現状には満足しないということを強く話されていたのが印象に残りました。自分には何が足りず,それを得るためにはどうすればよいのかを考えることは,効率的かつ効果的な練習のために必要であると考えさせられました。

 また,オーケストラや様々な形態の演奏の基礎となるアンサンブル能力を養うために「管・打楽合奏」という授業があることに加え,学生が少人数であるため本番の機会の多い京都芸大は本当に恵まれているのだと感じました。

 白子さんも話されていましたが,日本の伝統音楽の授業で素晴らしい先生方が来てくださるのも他ならぬ京都ならではの特色だと思います。

 私も足りないものを追求し,現状には満足しない音楽を追い続ける演奏家を目指していきたいと思います。

鎌田邦裕(音楽学部 管・打楽専攻 3回生*取材当時の学年)

 白子さんは何といっても熱い人!という印象でした。本当にたくさんのことを,白子さんの想いのこもった言葉で語ってくださいました。年齢も私たちに近く,第一線で活躍されている方のお話はとても刺激的で,勉強になることばかりでした。

 白子さんへのインタビューの中で,学生時代に築いた関係や繋がりだけが全てではないという趣旨の言葉が特に私の心に強く残っています。

 大学を卒業したら就職するという考え方が多い今の時代の流れの中で,私は将来のことで少し焦っていましたが,改めて自分の進路や音楽に対する心構えなどを見つめ直すことができました。

 私も京都芸大の長所を最大限に生かして,幅広く多くのことを吸収していきたいです。

(取材日:2014年11月14日・本学音楽棟217号室にて)

Profile:白子 正樹【しらこ・まさき】クラリネット奏者

滋賀県生まれ。2006年京都市立芸術大学を「音楽学部賞」を受賞して卒業。卒業後ロームミュージックファンデーション奨学生として渡独し,ケルン音楽大学を最優秀の成績で卒業。

第76回読売新人演奏会出演。第5回滋賀県新人演奏会において最優秀賞を受賞。第6回パドヴァ国際音楽コンクール管楽器部門第1位。第4回“SaverioMercadante”国際クラリネットコンクール第1位。2009年1月ケルンのBechsteinhausにおいてソロリサイタルを開催。

同年4月からザ・カレッジ・オペラハウス管弦楽団契約団員。2011年5月から札幌交響楽団のクラリネット副首席奏者として活躍している。