閉じる

共通メニューなどをスキップして本文へ

ENGLISH

メニューを開く

小西 潤子さん 2/4

2.京都芸大で学ぶ


在学時よく出入りしていた講堂の調光室

interviewer_music他大学から,京都芸大の大学院に進もうと思われたのはどうしてでしょうか。

小西 音楽学の世界は,横のつながりがあります。私は大阪音大で学んでいた当時から,大阪大学文学部美学科の山口修先生に卒業論文の指導を乞うていました。新鋭の若手研究者として,山口先生と同じ大阪大学にいらした中川真先生が,できたばかりの京都芸大大学院に赴任されることになったのです。

 新たなスタートを切った京都芸大大学院で学ぶことで,大阪音大での4年間の学びがまた違う角度から見えるかもしれないと思い,新しい環境での学びと将来への期待から,進学を決断しました。


中国・西安への研修旅行(1987)

interviewer_music京都芸大での学生生活を,どのように過ごされましたか。

小西 学生生活は,他大学から京都芸大の大学院に進学したこともあり,学部からそのまま上がってきた人と上手くやっていけるか不安なところもありました。

 その中で,一番の思い出となったのが,中国への研修旅行です。修士1回生の時,京都市と中国の西安市の姉妹都市交流事業の一環で,西安市をはじめ,北京や上海など一通りの都市を周遊することができたのです。それまで,美術学部は姉妹都市交流に参加していたのですが,ちょうど交流事業が見直され,音楽の学生にもチャンスが巡ってきました。

 当時の中国は,今ほどに外国に対して開かれていなくて,個人旅行をするなんて私には想像もできませんでした。京都市と京都芸大からの派遣という後ろ盾もありましたから,研修旅行では中国側も私達に色々と配慮をしてくれて,安心して旅をすることができました。あの頃の中国各地を巡ることができたことはものすごく良い経験になりましたし,その後の研究活動の力になりました。当時の資料は今でも持っていますよ。京都芸大に非常に感謝しています。

 その他,学内の講堂に頻繁に出入りしていたことが思い出されます。講堂で実験等をされていた音楽心理学の浅井憲教授(当時)を慕って,みんなのたまり場みたいになっていました。

interviewer_music京都芸大での研究活動は,どういった感じで進められていましたか。

小西 できたばかりの大学院では,同じ学年で音楽学を専攻していた学生は2名だけでした。また,中川先生は,今まで音楽学を学んだことのない実技の学生への論文指導もされていました。実技の学生さんの感性に訴えかけるために,みんなでお祭りを観に行くなど,体験型の学外実習を取り入れたりされていました。

 一方,ゼミに関しては本当に厳しくて,英語の論文を毎回一本読まないといけない課題があったんです。その頃は何が何だかよく分からなかったのですが,おかげで専門に特化したディープな学びを体験できました。

interviewer_music大学院に在籍されていた当時は,どのような将来像を描かれていましたか。

小西 ぼんやりとですが,研究者への憧れはありました。だからといって,猛烈に努力したわけではなくて,「将来結婚して,子育てと両立できる程度に研究できればなあ」くらいに思っていました。

 修了するころには,そんな思いさえも消えかけていました。修士2年の時に結婚して1年休学し,「もう研究の道を進むのは止めよう」って思ったんです。すると,中川先生から「君みたいな人は,専業主婦には向いていない!進学しなさいよ!」と言われて・・・「そうかなぁ?」と(笑)。

interviewer_music先生の言葉を受けて,大阪大学の博士課程へ進学されたわけですが,それは何故でしょうか。

小西 もともと,私は研究だけでなく大学教育にも興味があったことを思い出したのです。そのためには,キャリアを積み重ねていかないといけない。周りを見渡してみると,研究者を目指してちゃんと勉強している人が多かったんです。その様子に刺激を受けました。中川先生の言葉は,そこに目を向けるきっかけを与えてくれました。

 進学希望を夫に相談したところ,「受けてみたら」と。しかし,合格することは夫には想定外だったようです(笑)。

 中川先生にしてみても,「やめます」っていう学生をそのまま放っておいた方が楽だったでしょうに。あの時の中川先生のご判断によって今の私がある。中川先生には感謝しています。

インタビュアー:稲谷祐亮(音楽研究科修士課程 作曲・指揮専攻(作曲)1回生*取材当時)

(取材日:2015年11月6日・本学大学会館にて)

Profile:小西 潤子【こにし・じゅんこ】大学教員

大阪府出身。1990年京都市立芸術大学大学院音楽研究科修士課程修了。1998年大阪大学大学院文学研究科博士後期課程芸術学専攻(音楽学)修了。

専門は民族音楽学。主にオセアニアの民族音楽を中心に人々と音楽との関わりについて研究している。

静岡大学教育学部教授を経て,現在,沖縄県立芸術大学音楽学部音楽学科教授。