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玉木 優さん 3/4

3. 後進の指導


interviewer_musicいつ頃から後進の指導に関心を持たれたのですか。

玉木 演奏家としてのキャリアを歩み初めた当時から教育には携わってきましたが,自分の中で教育というものの捉え方が大きく変化したのは,スイス留学中に東京で開催されたバウスフィールド氏のアカデミーへ同行したことがきっかけでした。その時の私の仕事は通訳で,彼の早口の英語を詳細まで丁寧に伝えるべく最大限に努力したところ,受講生たちの演奏が目に見えて進歩している確かな手応えが感じられました。与えられた自分の仕事を全うしようとしただけなのですが,受講生はもちろんバウスフィールド氏からも「これまで日本でこんなに成果が出たことはなかった。ありがとう。」と謝辞を伝えられたんです。自分が当たり前に取り組んだことが,こんなにも深く直接的に感謝されるという経験は新たな発見で,こういうことが社会貢献に繋がるのかなと感じました。

 最近はプロ奏者育成のためのワークショップを主宰していますが,私のように,世界の様々な地域で活動してきた奏者はあまりいませんから,この特異な経験を次世代のサポートに活かしたいと思っています。


主宰しているプロオーケストラ奏者志望者のためのワークショップ。師であるイアン・バウスフィールド氏をゲストに迎えて(2013)

interviewer_music自分が望むキャリアを歩むためには何が必要ですか。

玉木 一つは自分と楽器の関係とは一体何なのか。楽器を使って自分は一体何をして生きていきたいのかということを考えてみることが大事です。もう一つは生活していく上で,お金を稼がないといけないわけですから,自分と楽器との関係の中で,どのようにお金を稼ぐかということにも意識を働かせる必要があります。自分がやりたいこととお金を稼ぐことの二つを分けて考えることができたらよいのではないかと思います。

interviewer_music音楽活動や練習からの気分転換のために何かされていることはありますか。

 そもそも僕は練習があまり好きな方ではないので,どうすれば効率よく成果を上げることができるかを常に考えています。それでも行き詰まった時には,練習を完全にやめて旅行に出かけ,いつもとは違う景色を見たり,食べることが好きなのでレストランで食事をしたり,料理を作ったり,音楽とは全く離れたことをしています。

interviewer_music在学中のどのような経験が今に生きていますか。

 指導してくださった呉先生は,先生の考えを押し付けるのではなく,生徒自身の素材を活かし,自分が出したい音を引き出してくれるようなレッスンでした。そのおかげで,自分で考える力というのを教えてもらえたんじゃないかと思います。

インタビュアー:中村文香,寺谷春乃(いずれも管・打楽専攻3回生*取材当時)

(取材日:2015年12月28日・下京区役所にて)

Profile:玉木 優【たまき・ゆう】トロンボーン奏者

1980年兵庫県出身。2003年京都市立芸術大学音楽学部卒業。

2012年度文化庁海外研修奨学生としてスイス・ベルン芸術大学を最優秀で修了。米国ミシシッピ交響楽団,東京佼成ウインドオーケストラを経て,現在南デンマークフィルハーモニー管弦楽団副首席奏者。日本管打楽器コンクール第1位,韓国チェジュ国際金管楽器コンクール第2位ほか,国内外で受賞多数。また2013年よりプロ奏者育成のためのワークショップを主宰。音楽之友社「バンドジャーナル」誌にてコラムを連載。