閉じる

共通メニューなどをスキップして本文へ

ENGLISH

メニューを開く

名和晃平さん 4/4

4. アートと建築

interviewer今後やりたいことや,将来の夢をお聞かせください。

名和 今後の活動の方向性としては建築にも力を入れていきたいですね。3年程前から建築事務所を立ち上げて,既にいくつかのプロジェクトを手掛けました。彫刻と建築,その両方をしっかりと進めたいと思います。アートと建築の融合というか,どちらともいえない領域にも踏み込んでみたいですね。それがアートにとっても建築にとっても,今までの概念を打ち破るものになると良いと考えています。

interviewerSANDWICHでの取組を通じて,何を行っていきたいですか。

名和 特に決めてはいません。建築は依頼されることが多いんですが,自分で勝手に考えているものも結構あります。全く新しい作品というものは,誰からも頼まれない状態から生まれるものと思っています。

interviewer最後に,京都芸大を志す受験生と在学生へ一言



Force(2016 / dimensions variable)mixed media
"New Sensorium-Exiting from Failuers of Modernization",ZKM
courtesy of SCAI THE BATHHOUSE

名和 京都芸大は優れたアーティストを多数輩出した優れた大学だと思われるかもしれませんが,まずはしっかりと自分自身の考えや価値観を持っていることが大事です。そうでないと,何となく大学生活をやり過ごしてしまいます。大学はゴールではなく,はじまりです。受験の段階から大学卒業後のことを何となくイメージしておいた方が良いでしょう。

 美大生は将来の希望を持ちづらいとか,若手作家の行き場がないとか色々な不安もあると思います。しかし,道は自分で切り拓くべきなんです。どんな時代でも生き残る人はいるし,その人たちが各分野のクリエイションシーンをつくっていきます。「苦しい,上手くいかないのは当たり前」。そう思う位がちょうどいいのではないでしょうか。大変ですけど,そう思えたら案外できるものですよ。

インタビュー後記

 誰しもいずれ社会に出なければなりませんが,自分のやりたいこと,今していることが将来に繋がるのか分からず不安で,また今の社会の有り様,働き方の有り様に疑問を抱いていた私にとって,名和さんは一つの答えを提示して下さったように思いました。

 名和さんがご自身の将来像について以前から明確にビジョンを描いていなかったことは,少し意外でした。しかし,考えることや作品を作ること,覚悟を決めることはとても重要なことだと,話を伺い感じました。そこがあってこそ,将来に結びついていき,面白いモノやコトが出来上がっていく…SANDWICHを通して社会と関わり合い,プロジェクトをこなしながらも,自由に制作を続ける名和さんの姿勢が,確実に京芸時代の延長線上にあるということは,今後,私が京芸での時間をどう過ごしていくかを考えさせられました。

 今回名和さんへのインタビューをさせて頂いたことは大変貴重な経験となりました。お忙しい中お時間を割いていただき,本当にありがとうございました。

河原 雪花(美術科1回生*)*取材当時の学年

(取材日:2015年11月25日・SANDWICHにて)

Profile:名和 晃平【Kohei NAWA】彫刻家

1975年大阪府生まれ。1998年京都市立芸術大学美術学部彫刻専攻卒業,1999年英国Royal College of Art交換留学,2003年同大学大学院博士(後期)課程彫刻専攻修了博士号取得。独自の「PixCell」という概念を機軸に,多様な表現を展開。2009年京都市伏見区にクリエイティブ・プラットフォーム「SANDWICH」設立。2011年東京都現代美術館で個展「名和晃平―シンセシス」を開催,2013年「犬島『家プロジェクト』」や「あいちトリエンナーレ2013」に参加。京都造形芸術大学教授。