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下内香苗さん 4/4

4. 「無茶」のススメ

interviewer学生の間にやっておいた方が良いことはありますか。

下内 「無茶をする」。決して悪いことをするというわけではなく,普段自分が絶対しないということをするという意味です。私は無茶をしなかったので後悔しています。一般的に,人は自分の価値観の中でしか生きていないと思いますが,そのままでは,自分の中の引出しが増えることはありません。だから若い学生の内に,無茶をして引出しを増やしておくと良いと思います。例えば,普通の人は旅行に行く際,時刻表を調べて,計画を立てていくと思いますけど,リュックだけを背負って成行きにまかせて旅に出るとか。会社勤めは,学生時代のものづくりのように,毎日のキラキラした感じはないし,自由にできることも限られます。自分の思うとおりにならないことや,決められた仕事も多くて面白いことばかりではありませんが,そんな中でもお客様が喜ぶ商品を作りたいと思っています。学生時代にもっと色々な経験を積んで,自分の引出しを増やしていれば,もっと素晴らしい商品を世に送り出せたかもしれません。私は学校にこもって制作ばかりしていたので,もっと海外旅行に行くとか,映画を山ほど観るとか,本を夜通し読むとか色々と無茶をすればよかったかなと後悔しています。

 また,素敵な物や美しい物を見たり,憧れの人に会ったり,少しでも心が震えるものに触れることが大事だと思います。私は社会人になってから好きな作家さんができ,その人の作品を見るのが楽しみになっています。

interviewer今後やりたいことはなんですか。

下内 公私ともに,ものを生み出すことで色々な人に出会い,自分もそこから元気をもらいたいです。そして,ものを生み出すことによって,世の中や人々の暮らし・家庭が幸せになっていけばいいななんて大きなことを考えつつ(笑),日々地道に仕事をしていきたいです。

interviewer受験生に向けて一言お願いします。

下内 受験勉強は大変でつらい日々ですが,そのような状況にあっても少しでも好きだと思うアートやクラフトに触れて,作り手と対話して欲しいです。大学には色々な人がいます。個性的な人,技術のある人,上手い人,賢い人,憧れの人,それまで出会ったことのない人。そんな人たちに出会えることを楽しみに頑張ってください。

interviewer在学生にも一言お願いします。

下内 答えが出ないことに対して,焦り,迷うことがたくさんあると思います。自分はできませんでしたが,「手を動かすこと」と同じくらいに,「考えること」「色々なことを見ること」も経験して欲しいです。

インタビュー後記

 今回,下内さんにインタビューさせていただいたことは卒業後の進路を考え始める2回生の私たちにとって非常に印象に残る経験となりました。

 下内さんは,今のお仕事について生き生きとした様子で答えてくださいました。私たちは企業勤務に対してどこか固いイメージを持っていましたが,下内さんは充実した生活を楽しんでおられる様に見えました。それは大学時代,陶磁器専攻でひたむきに制作に打ち込まれた体験を御自身の持ち味に生かされているからこそだと考えました。

 インタビューを通じて,京都芸大という環境の特徴や,学外に関心を持ち続けることの大切さに改めて気づくことができました。私たちは大学生活のほとんどの時間を制作に使ってしまいがちです。しかし,下内さんが仰っていたように学外へ色々なものを見に行って,作品制作の為にも今後の人生の為にも,自分自身の引き出しを増やすことも大切にしたいです。

インタビュアー:木田陽子,前 瑞紀(いずれも美術学部陶磁器専攻2回生*)*取材当時の学年
(取材日:2017年11月23日・本学大学会館にて)

Profile:下内 香苗【Kanae SHIMOUCHI】

1986年,徳島県生まれ。京都市立芸術大学美術学部工芸科陶磁器専攻卒業。2010年,株式会社フェリシモ入社。雑貨のWEBサイト『Kraso』『ecolor』等のサイトマネージャーを経験後,同ブランド生活雑貨の商品企画を担当。その後,新規事業部で食品関連事業の立ち上げに参加。現在は同じく新規事業部で商品調達業務とバイヤー業務を行う。