閉じる

共通メニューなどをスキップして本文へ

ENGLISH

メニューを開く

島田陽さん

1. 建築にのめり込んだ学生時代

interviewer幼い頃はどのような子どもでしたか。

島田 幼い頃は自然が大好きだったので生き物の研究者になろうと思っていました。でもそれが一転,「機動戦士ガンダム」や,「宇宙戦艦ヤマト」の影響で,ガンダムやロボットばかり描く子どもになってしまいました。そのお絵かきがきっかけとなってデザインに魅かれていったように思います。

interviewer京都芸大を志望された理由を教えてください。

島田 父親がギャラリーを経営していて,幼いころからアーティストが身近にいる環境だったので,自分も何となく芸大に行ってみようかという感じでした。しかし,アーティストを見ていて,自分とは違うかなとも思っていました。家具にも興味があったので,どちらかというとアーティストではなくデザイナーになれたらいいなという感じでした。当時,雑誌などではプロダクトデザインは花形の職業でしたから。

なぜ京都芸大かと言うと,芸大受験のために通っていた画塾の雰囲気が,みんなが京都芸大に行くんでしょみたいな感じだったので,周囲に影響されて京都芸大を目指しましたね。

総合基礎実技で制作した作品

interviewerどのような学生生活を過ごされましたか。

島田 大学の近くに住むと友達のたまり場になるから良くない,という兄からのアドバイスで,当初は少し離れた上桂に住んでいました。でも,これは違うと感じて,2箇月も経たない内に大学のすぐ隣に引っ越しました。それからは,ずっと大学にいるような生活で,朝から晩まで,黙々とものづくりをしていました。

interviewer始めから建築の勉強がしたくて京都芸大に入学されたのですか。

島田 最初は建築のことは頭にはなかったですね。家具とかプロダクトのデザインや彫刻などの立体物に興味があったので,どちらかと言うとその関係の仕事に就くのかなと思って入学しました。

 建築に興味をもったきっかけは,1回生の時の総合基礎実技の授業です。当時,共同制作の課題が夏休み期間中にあって,「学内にみんなが休憩できる〈巣〉のようなものを作ろう」と,ドーム状のものを制作しました。その時に空間が人に与える影響というのが面白いなと思ったのがきっかけですね。

芸大祭で制作したオブジェ

2回生になると,芸大祭委員のデコレーションセクトのセクト長になりました。それまでのデコレーションセクトは,大学の正門を綺麗にしたり,インフォーメーションブースを設けたり,飾り付けをする部門だったんですけど,私の代ではそれらを集約して,中央棟のピロティの空間で一つの建物みたいなものを制作しました。こういう空間をつくるのが建築家の仕事なのかなと思って更に建築に興味が湧きました。体験型のアートにも興味があったのですが,安藤忠雄さんが設計した階段を下りていく構造が特徴的な本福寺(淡路島)を見て,刺激を受け,それからどんどん建築にのめり込んでいきました。

interviewerどのような学生でしたか。

島田 良い学生ではなかったように思います。評価しやすい学生ではなかったかな。割と反抗的な学生だったような…。今思えば些末な事ですが,例えば写真の課題で,低い評価をされたんですけど納得がいかなくて,どういうことですかと教員に問い詰めたこともありました。

でもね,他大学で非常勤教員をやっていて,そこではよく言っているんですけど,20も30も年の離れた教員に向かって「何が分かるんだ」と言えるくらい,自分の制作に確信をもって課題に取り組んでいるということは大事ですよ。今の学生は,評価のために課題をこなそうとするけど,そうではない。要は,あなたがやりきったかどうか。やりきったならば,何かしらの形で自分に返ってくるものはある。たまたま評価されたらいいけど,されなくてもそんなに気にすることはないです。

interviewer京都芸大に入って良かったことは何ですか。

島田 大学にいる意味って,ずっといていい場所があって,自由に使える設備があることですよね。皆さんも卒業すると大学施設は使用できなくなるわけだから,ぜひ在学中にその利用できる環境を享受してください。

図書館もそうです。普通の図書館に無いような芸大特有の本が置いてあるから,在学中に活用してほしいです。「新建築」等の専門誌のバックナンバーを借りて,「あの建築家,昔こんなことやっていたんだ」とか知ることはすごく勉強になると思う。最近の若い人は,インターネットに何でも掲載されていると思いがちだけど,せいぜいここ30年位のことしか載っていないですよ。

インタビュアー:遠藤桃花,中井由梨(いずれも美術学部デザイン科環境デザイン専攻3回生*)*取材当時の学年
(取材日:2018年12月19日・島田陽建築設計事務所(神戸市)にて)

Profile:島田 陽【SHIMADA Yo】

1972年神戸市生まれ。1995年京都市立芸術大学美術学部デザイン科環境デザイン専攻卒業。1997年同大学大学院修了。1997年タトアーキテクツ/島田陽建築設計事務所設立。

「六甲の住居」で第29回吉岡賞,「石切の住居」で日本建築設計学会賞大賞,「ハミルトンの住居」でNational Commendation, AIA National Architecture Awards,「宮本町の住居」でDezeen Awards2018 House of the Year受賞。

著書に『7iP #04 YO SHIMADA』『現代建築家コンセプトシリーズ22/日常の設計の日常』等。京都造形芸術大学客員教授。