閉じる

共通メニューなどをスキップして本文へ

ENGLISH

メニューを開く

島田陽さん 4/4

4. 建築は飽きない。勉強しても,し過ぎることがない。

interviewer島田さんにとって建築とは何ですか。

島田 「これだけ飽きないことは他にない。勉強してもし過ぎることがない。」ということでしょうか。また,「こんな楽な学問はない」と,非常勤教員をしている別の大学で言ったことがあるけど,建築の場合は,興味を持って勉強したことは何かしら自分のアイデアにプラスになって建築に活かすことができます。建築やデザインの世界って,多方面に受け皿があって,人材の需要はあるので,生計を立てることはできます。だから,心配しなくても建築やデザイン等を追求していれば,何とかなりますよ。

ハミルトンの住宅 ©Christopher Frederick Jones

interviewer島田さんにとって住宅とは何ですか。

島田 洋服でもなんでもそうですけど,今オーダーメイドで何かを作る人はほとんどいませんよね。でも家だけはオーダーメイドが可能です。建築家が施主ととことん付き合って,何なら心の奥の願望まで聞き出してくれて,形にしてくれます。だから,住宅は「すごく贅沢なもの」。建築家に住宅を頼んで一から建ててもらうということは,この世の中の最も贅沢な出来事の一つだと思っています。

interviewer今後やりたいことはなんですか。

島田 建築の仕事はコンスタントにあるので,もうちょっと違う種類の建築を色々やっていきたいです。また,どんな仕事も精一杯やる。仕事によって,かける力を変えないようにしています。後悔のない仕事を心掛けています。

interviewer受験生に一言お願いします。

島田 京都芸大は,入学後,専攻を選ぶことができます。高校生の時から将来どうするか決めるのは難しいですよね。自分の場合も,入学の時には考えていなかった建築の道が見つかりました。課題に取り組んでいるうちに,自分の好きなことが見つかると思います。あとは,京都芸大の入試は独特だから,運が必要かもしれません。自分の年は人体デッサンでした。次の年は,イチゴのデッサン。自分は,人体デッサンが得意だったから良かったけど,次の年なら合格していなかったかもしれませんね。

interviewer在学生にも一言お願いします。

島田 せっかく京都にいるんだから,今のうちにお寺とか神社とか京都の伝統建築物を見てもらいたいですね。2年位前に行った,北村美術館の「四君子苑」という建物は良かったですよ。伝統建築を見ておくことは何かの役に立つと思います。だって東京の学生にはそうそうできることではないですからね。あと桂離宮も見ておいた方がいいんじゃないかな。私も何回か行きました。「初めての時にはこう感じた。その後,勉強してから行くとこう感じた。でも最初の知らない時の感覚には戻れない」。直接,その感覚が活かされているかは分からないけど,そのような経験や感覚は大事です。

インタビュー後記

遠藤桃花(美術学部デザイン科環境デザイン専攻3回生*)*取材当時の学年

学生時代や現在のお仕事のエピソードをお聞きしていると,島田さんが今まで手がけてこられた住宅や作品のスタイルの基礎的な部分は学生時代に培われたものであることがわかりました。学生の頃から積極的に”場”を作ってこられた制作への姿勢を見習い,今後の学生生活を過ごしていきたいと思います。

中井由梨(美術学部デザイン科環境デザイン専攻3回生*)*取材当時の学年

環境デザインは,建築だけでなく家具から内装・ランドスケープに至るまで様々なことを学べる専攻です。いろいろなことを学ぶ中で建築や空間の面白さに惹かれていったという島田さんの言葉には,私の見ている光景と近しいものを感じ,とても嬉しかったです。学校で制作に打ち込み,図書館に入り浸っていたというお話には,襟を正さなければと思いました。特に印象的だったのが,学生時代の建築作品が,島田さんの現在に繋がっているお話です。私も今年,芸祭で屋台を制作し,自分の作りたい空間を作ることに挑戦しました。今後も好きなことを自由に探求できる環境を大切に過ごしていきたいと思います。

(取材日:2018年12月19日・島田陽建築設計事務所(神戸市)にて)

Profile:島田 陽【SHIMADA Yo】

1972年神戸市生まれ。1995年京都市立芸術大学美術学部デザイン科環境デザイン専攻卒業。1997年同大学大学院修了。1997年タトアーキテクツ/島田陽建築設計事務所設立。

「六甲の住居」で第29回吉岡賞,「石切の住居」で日本建築設計学会賞大賞,「ハミルトンの住居」でNational Commendation, AIA National Architecture Awards,「宮本町の住居」でDezeen Awards2018 House of the Year受賞。

著書に『7iP #04 YO SHIMADA』『現代建築家コンセプトシリーズ22/日常の設計の日常』等。京都造形芸術大学客員教授。