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佐渡 裕さん

1. 進路で悩んだ高校時代

interviewer_music小学生の頃からフルートを学ばれていらしたそうですね。

佐渡 音楽には幼い頃から接していて,小学校6年生の時に出会ったフルートを,進学した京都市立堀川高校音楽科(現京都市立堀川音楽高校)でも続けていました。その一方で,小さい頃から指揮者に強い憧れがあり,高校生になってからも,その気持ちはいささかも変わらず,進路を考える際も大学で指揮を学びたいと思っていました。

interviewer_musicそうした気持ちをお持ちだったのに,大学で指揮を学ばれなかったのは何故ですか。

佐渡 大学に進んでからもフルートを続けるのか,それとも指揮者を目指すのか,この二つの道の選択で本当に迷いました。そんな時に小学生時代からフルートを指導してくださっていた伊藤公一先生(京都市交響楽団首席フルート奏者:当時)から「フルートもちゃんと吹けない人間が指揮なんてできないよ」という言葉をかけられました。伊藤先生は,私が指揮の道を進むことを反対されたわけではなくて,フルートをちゃんと学ばせたかったんでしょうね。先生のその言葉を聞いて,自分でも納得する部分があり,最終的に大学は管・打楽に進み,フルートを続けることになりました。大学に進む段階で指揮者になる道が開けていかなかった要因は,学校に限らず自分の周りに指揮者のことを詳しく理解している人がいなかったということに尽きます。

堀川高校音楽科(現・京都市立京都堀川音楽高等学校)時代

interviewer_musicそれは具体的にはどういうことでしょうか。

佐渡 例えば,ピアノであれば,小さい頃から習う人も多いので,ピアノの世界について世間の人もイメージできる人も多いと思いますが,指揮者のことについて知る人というのは,ごく少数であって,その内実がよくわからないというのが実態です。実際に,指揮の先生がどんなことをして,何を教えるかなんてことは世の中のほとんどの人が知りませんよね。ですから,若者が指揮者を目指すといっても周りの大人にしてみれば,自分たちもよくわからないだけに諸手を挙げて賛成はしづらいわけです。音楽のことをそこそこ知っている人なら話は別ですが,そうでもないかぎり「指揮者になるのか,頑張れ!」と言ってくれる大人はまずいないでしょうね。

インタビュアー:橋詰智博(指揮専攻3回生*取材当時)

(取材日:2015年9月17日・本学音楽研究棟にて)

Profile:佐渡 裕【さど・ゆたか】指揮者

1961年京都市生まれ。1984年京都市立芸術大学音楽学部管・打楽専修修了。

1987年アメリカのタングルウッド音楽祭に参加。その後、故レナード・バーンスタイン,小澤征爾らに師事する。1989年新進指揮者の登竜門として権威あるブザンソン国際指揮者コンクールで優勝し,国際的な注目を集める。1995年,「第1回レナード・バーンスタイン・エルサレム国際指揮者コンクール」で優勝し,「レナード・バーンスタイン桂冠指揮者」の称号を授与される。

現在パリ管弦楽団,ケルンWDR交響楽団,ベルリン・ドイツ交響楽団,BBCフィルハーモニックなどへの客演を毎年多数重ねており,2015年9月よりトーンキュンストラー管弦楽団音楽監督に就任。

国内では兵庫県立芸術文化センター芸術監督,シエナ・ウインド・オーケストラ首席指揮者を務める。