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佐渡 裕さん 4/4

4.夢を持ち,扉を開く


現在,トーンキュストラー管弦楽団にて音楽監督を担う ウィーン楽友協会にて ©Dieter Nagl

interviewer_musicご多忙な日々をお送りですが,頭を休めたり,リラックスするための時間はあるんですか。

佐渡 ゴルフが好きなので,時間があればプレーに出掛けています。ゴルフの魅力は色々ありますが,自分のメンタルにものすごく左右されるスポーツですし,7キロも歩くから適度な運動にもなります。自分との戦いであり自然との戦いでもある,そんなスケールの大きに魅かれます。

interviewer_music今後しばらくはウィーンにお住まいになるのでしょうか。

佐渡 ウィーンでの仕事は1年の内の4箇月ぐらいで,並行して兵庫での仕事もありますから日本と行ったり来たりの生活になりそうです。家族は休みの期間にウィーンに来るかもしれませんし,子どもも小さい内は経験として住まわせるかもしれません。でも,子どもは基本的には日本で育てようと思っています。あちこち海外に行って外国語も得意になって,というのがよいと考える人もいますが,私はあまりそうは思わなくて,語学はある程度大きくなってからで十分だと思っているんです。それよりも自分が育った背景というか,おせんべいが大好きだったり,祝い事には赤飯を炊くとか,日本らしさを学んで身に付けて欲しいと思っています。

interviewer_music京芸を志す受験生,在学生に向けてメッセージをお願いします。

佐渡 私が京都芸大で過ごした4年間は,自分の中で色々と思い悩むこともあった時代でしたが,この環境の中で自分は将来指揮者になろうという思いを強くしていった本当に思い出深い場所です。

 大学の特徴として,カリキュラムに余裕があるし,学生数の少ない小さな学校だからこそ先生と生徒が向き合う度合は非常に充実していて,私から見れば学ぶ人にとっては本当に行き届いた教育環境だと思います。

 京都芸大の学生は昔から大人しいと言われますが,せっかく色々なことができる環境にあるのだから,在学生にはもう少しパワーを持って欲しいですね。もう少しどろっとした愛情や憎しみ,痛みといったようなものが,もっともっと見えてきてこそ音楽の面白さは表出するものですから。

 そして,若い学生の皆さんには是非とも夢を持って欲しいものです。それも一つに限らずたくさん持っていてもよいと思います。夢を叶えるには才能はもちろん,運や努力も必要です。私はバーンスタイン氏との出会いが私の人生の扉を開く契機となったわけですが,彼に会おうという強い想いを抱いて扉を開いたから今があります。扉の先に何があるかはわかりませんが,自分で開けてみようとすることが大切です。

 それと同時に,人に「感謝する」気持ちを大切にして欲しいと思います。今自分がここにいられるということは自分の力だけで果たせるものではありません。そのことに思いを馳せてもらいたいですね。 最終的な幸せというものは,夢を叶えることよりも,周りの人から「ありがとう」と言ってもらえることではないだろうかと私は考えています。

インタビュアー:橋詰智博(指揮専攻3回生*取材当時)

(取材日:2015年9月17日・本学音楽研究棟にて)

Profile:佐渡 裕【さど・ゆたか】指揮者

1961年京都市生まれ。1984年京都市立芸術大学音楽学部管・打楽専修修了。

1987年アメリカのタングルウッド音楽祭に参加。その後、故レナード・バーンスタイン,小澤征爾らに師事する。1989年新進指揮者の登竜門として権威あるブザンソン国際指揮者コンクールで優勝し,国際的な注目を集める。1995年,「第1回レナード・バーンスタイン・エルサレム国際指揮者コンクール」で優勝し,「レナード・バーンスタイン桂冠指揮者」の称号を授与される。

現在パリ管弦楽団,ケルンWDR交響楽団,ベルリン・ドイツ交響楽団,BBCフィルハーモニックなどへの客演を毎年多数重ねており,2015年9月よりトーンキュンストラー管弦楽団音楽監督に就任。

国内では兵庫県立芸術文化センター芸術監督,シエナ・ウインド・オーケストラ首席指揮者を務める。