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佐渡 裕さん 3/4

3. 海外で活動する意義

interviewer_music楽団のマネジメントの部分で勉強されている事はありますか?

佐渡 それは特にありません。これまでに兵庫で行ってきたことがすごく上手くいきましたから,その経験等を注入していきたいとは考えています。優秀な運営スタッフと積極的にコミュニケーションを図りながら楽団のマネジメントに当たりたいと思っています。


レナード・バーンスタイン・エルサレム国際指揮者コンクール優勝時(1995年)

interviewer_music若い頃から海外で活躍されていらっしゃいますが,日本で音楽を学んでいる人がヨーロッパを目指す際に学んでおくべきことはありますか。

佐渡 ものすごく細かなところから大雑把な部分まで,たくさんあるから一言では表現しづらいですが,まずやっぱり精神的な部分として西洋音楽は元々ヨーロッパから始まったわけですから,そこの場所に行くだけでも価値はあると思います。ザルツブルグに行けばモーツアルトがすぐそこにいますし,ウィーンに行けばベートーヴェンやブラームスが活躍した場所があるわけです。そういうものを知りたいと思うことは大切です。

 その一方で,海外での活動には言葉の壁がつきものです。私も,フランスに17年もいたけれど未だに不便に感じているぐらいです。私の鞄の中には未だにドイツ語の参考書が入っていますよ。まだ20歳そこそこの学生の皆さんであれば語学もすぐに身に付きます。怠けていられるのも今のうちだけれど,勉強できるのも今のうちです。私はさぼりがちでしたから自戒の念を込めて言えば,語学は早くから取り組んだ方がよいと思います。

 私の場合,海外で活動を始めることになったのには色々なご縁もありました。自分自身,若い内に海外に出た方がよいとは思っていましたが,それでもレナード・バーンスタイン氏の招きや小澤征爾氏が背中を押してくださったことが大きかったし,海外行きを許してくれた親の存在がなければ行っていなかったかもしれません。そして幸いなことに海外に出て1年目でコンクールに入賞して,ヨーロッパでやっていけることが自分で徐々に見えてきたんです。

 ヨーロッパのコンクールで入賞した日本人が,そのまま現地に残っているケースが少ないことからもわかるように,実際に海外で活動を続けるのはとても大変なことです。でも,残って活動を続けるだけの意味はあるし,頑張り甲斐はあると信じています。海外の楽団と一緒に演奏会を行うというのは自分にとって大きな財産になります。私は今トリノの劇場の首席客員指揮者も務めていますが,彼らと共にオペラを作る作業は本当に大きな喜びです。面倒なことが山ほどあっても,それをはるかに越える喜びを与えてもらっています。

インタビュアー:橋詰智博(指揮専攻3回生*取材当時)

(取材日:2015年9月17日・本学音楽研究棟にて)

Profile:佐渡 裕【さど・ゆたか】指揮者

1961年京都市生まれ。1984年京都市立芸術大学音楽学部管・打楽専修修了。

1987年アメリカのタングルウッド音楽祭に参加。その後、故レナード・バーンスタイン,小澤征爾らに師事する。1989年新進指揮者の登竜門として権威あるブザンソン国際指揮者コンクールで優勝し,国際的な注目を集める。1995年,「第1回レナード・バーンスタイン・エルサレム国際指揮者コンクール」で優勝し,「レナード・バーンスタイン桂冠指揮者」の称号を授与される。

現在パリ管弦楽団,ケルンWDR交響楽団,ベルリン・ドイツ交響楽団,BBCフィルハーモニックなどへの客演を毎年多数重ねており,2015年9月よりトーンキュンストラー管弦楽団音楽監督に就任。

国内では兵庫県立芸術文化センター芸術監督,シエナ・ウインド・オーケストラ首席指揮者を務める。