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安田 直己さん

1. 合言葉は「攻めていこう」

interviewer_music音楽との出会い,そして打楽器を始められるに至った経緯を教えてください。

安田 母が音楽好きで,子どもには何か音楽をやらせようと考えていたらしく,兄はドラム,私はピアノを習い始め,その当時は兄のドラム教室にもよく遊びに行っていました。

 私が通った中学校は吹奏楽部が強く,入学式後に行われた歓迎演奏会がとても素晴らしかったこともあり,仮入部してみることにしました。仮入部の際に楽器は何をやりたいかと聞かれ,ドラムしか知らなかったから,とりあえず叩いてみたところ,先輩たちがやたらと褒めてくれたんです。それが部員勧誘のための作戦とも気づかず,すっかり気分を良くした私は勘違いしてそのまま入部(笑)。そんな状況でしたから入ってからが大変でしたが,顧問の先生にも支えられ充実した3年間を過ごしました。

 高校は吹奏楽に力を入れている学校への進学を考えていて,いくつかの学校を選択肢として考えていましたが,顧問の先生の勧めもありましたし,定期演奏会にも足を運んでみるなどして,最終的に洛南高校を選びました。高校ではとにかく部活だけやっていた感じで,最初の内は勉強も頑張ったけれど,すぐに成績は急降下(笑)。本当に練習漬けの毎日でした。私が在籍した当時は3年生の1月に定期演奏会がありましたし,京都芸大の合格発表当日も大学で掲示を確認した後,その足で高校に戻り,3月末の選抜大会に向けて練習していたぐらいですから実質的に卒業するまで活動していました。

interviewer_music京都芸大に進学されたのはどうしてですか。

安田 当時の吹奏楽部の顧問の宮本輝紀先生は,京都芸大卒業生で京都市交響楽団のファゴット奏者として活躍されていた方でした。それから部活の4学年上の先輩に,現在NHK交響楽団の首席トランペット奏者として活躍されている菊本和昭さんがいらして,部活内でも名前の通った存在だったんですが,そんな菊本さんが学ばれている京都芸大に行けば,菊本さんレベルの人が大勢いるのではないかと考えたわけです。それに公立ですから私学と比べて学費面での負担も軽いということもありました。試験本番はセンター試験も二次試験も上手くいき,無事に合格できました。当時は本番になると手が震えて実力を出し切れないこともあったんですが,幸い試験ではそれもありませんでした。大学受験は京都芸大一本でしたから,合格して本当によかったです。

interviewer_music大学生活はどのような感じでしたか。

安田 入学した当初は,高校時代から環境が大きく変わりましたから,変化に早く適応することを意識していました。レッスンでは大学で初めて経験する内容もあり,マリンバは入学後に一から学ぶような状況でしたからかなり大変でした。それから高校は男子校(当時)でしたから,キャンパス内の女子の多さを見て,景色がすっかり様変わりした感がありましたね。あと,仲間内や先輩・後輩間の挨拶で,会う時間にかかわらず「おはようございます」を使うことにとても違和感を感じていました(笑)。

 1回生の時には,入学してすぐの四芸祭(現在は五芸祭)でオーケストラを初体験しました。メンバーが一人足りないということで声が掛かり,訳が分からないままにステージに上がることになり,ブラームスの「大学祝典序曲」のトライアングルを担当しました。練習時に先輩方からトライアングルの音色について指摘を受けたんですが,その違いが判らずに悔しい思いをした記憶があります。


大学2回生,冬の試演会にて。

 2回生になると,その年の定期演奏会から出演者選考にオーディション制が導入されました。それまでは実質的に上回生から選考されていきましたから,下級生にはなかなかチャンスは巡ってきません。私はこれをチャンスと捉え,オーディションはティンパニも打楽器も全て受けました。結果はオーディションに合格し,ステージに上がることができたのですが,この時期から自分の意識に変化があり,何事においてもアクティブに動こうと考えるようになっていました。その大きな契機は,2回生の春に参加した外部団体の催しの場で面識があった先輩方に名前を覚えてもらえていないことを知ったことでした。逆を考えればそれは当然のことで,上回生も含めて大勢の会員がいるわけですから,それも仕方ないなと思いつつも,忘れられてしまう程度の印象しか与えられてなかったことも確かで,そんな中で自分の存在を印象付けるには相当頑張らないといけないと考えたんです。それ以来,「攻めていこう」を合言葉にして,選択肢が提示されたら,その中から常にアクションを起こす方を選択するようにしました。プロオーケストラのオーディションも受けましたし,コンサートにも積極的に参加しました。それは「私はここにいる」ということを皆に知ってもらうためにはどうすべきか,という問いに対する自分なりの答えでした。それが実を結んだのかどうかは定かではありませんが,2回生後期頃から少しずつプロオーケストラから声が掛かるようになりました。オーディションに受かったわけではありませんでしたから,私がオーケストラプレイヤーを目指して頑張っている様子が先輩方の目に留まったのではないかと思います。プロと一緒のステージに立って間近で彼らの演奏の様子を見たり,話を聴く中で多くのことを学びました。

インタビュアー:池内里花(音楽学部 管・打楽専攻4回生*取材当時)

山田春佳(音楽学部 管・打楽専攻2回生*取材当時)

瀬之口翔也(音楽学部 管・打楽専攻2回生*取材当時)

重松 歩(音楽学部 管・打楽専攻1回生*取材当時)

(取材日:2018年1月5日・本学音楽研究棟にて)

Profile:安田 直己【やすだ・なおき】ティンパニ・打楽器奏者

1984年京都府出身。2007年京都市立芸術大学卒業。卒業演奏会に出演。2009年同大学院を首席で修了。大学院賞を受賞。(公財)青山財団の助成を受けベルリン,ウィーン,ストックホルムにて研鑽を積む。兵庫芸術文化センター管弦楽団ティンパニ・打楽器奏者を経て,2014年にフィンランド放送交響楽団に副首席打楽器奏者として入団,現在副首席ティンパニ奏者を務める。2008年度青山音楽賞新人賞受賞。兵庫芸術文化センター管弦楽団のリサイタル公演,NHK-FM公開収録「リサイタル・ノヴァ」等に出演。2017年度京都市立芸術大学非常勤講師。