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瀬 泰幸さん 3/4

3. ドイツ留学で得た経験を活かしたい


文屋先生とヴュルツブルク音楽大学にて

interviewer_music卒業後すぐにドイツに留学されましたが,いつ頃から考えていましたか?

 高校生の時に習っていた西口先生から,ドイツはクラシック音楽を勉強する環境が整っていると聞いており,ドイツに憧れはありました。また,大学に入ってオーケストラの曲を練習しているうちに,ドイツ出身の作曲家が多く,彼らが過ごした地で学ぶことで,彼らの感性をより理解でき,演奏に活かせるのではないかと,ドイツ留学を強く意識するようになりましたね。

直接のきっかけは,大学3回生の秋です。久しぶりに西口先生にお会いする機会があり,ドイツのヴュルツブルク音楽大学大学院で教鞭をとっておられる文屋充徳先生が横浜でレッスンをするという話をお伺いしました。その場で西口先生にお願いし,そのレッスンに参加させてもらうことになりました。

そのレッスンが素晴らしく,もう一度文屋先生のレッスンを受けたいと思い,4回生になる春休みには,ドイツで開催された文屋先生の講習会に参加しました。このころには,ドイツに留学する意思は固まっていたと思います。

ヴュルツブルク音楽大学大学院の入学試験は6月だったのですが,現地の環境に慣れるためにも,卒業してすぐ4月にはドイツに渡っていましたね。


ヴュルツブルクの名所・マリエンベルク要塞にて

interviewer_musicドイツでの留学生活はどうでしたか?

 素晴らしい経験ばかりでした。ヴュルツブルク音楽大学大学院に入ってからも,コントラバスの練習に明け暮れていました。周りの学生のレベルが高く,とても刺激を受けましたし,自分自身のレベルアップにつながりました。その甲斐もあり,ベルリン国立歌劇場管弦楽団オーケストラアカデミーのオーディションに合格することができました。これはとても嬉しかったですね。オーケストラに入るという目標にぐっと近づいた瞬間でしたから。

1年間ヴュルツブルク音楽大学大学院で過ごした後は,管弦楽団での活動をスタートするためベルリンに引っ越しました。管弦楽団では,インターン生として仕事もしながら練習に励みました。

ベルリンには,ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団をはじめ,ベルリン交響楽団やベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団など,世界でもトップクラスの管弦楽団が活動していたので,休みの日には数えきれないくらいのコンサートに足を運びました。しかも,日本と違って入場料が格安の立見席というのがあるので,本当によく利用しました。様々な一流オーケストラの音楽に日常的に触れ,またそのような音楽家の仲間と過ごせた時間が一番の宝物です。


ベルリン国立歌劇場管弦楽団のシンフォニーコンサート(2009)

interviewer_musicドイツに留学するときから,3年くらいで帰国しようと考えていたのですか?

 留学する前は,帰国については全く考えていなかったです。とにかく上手くなりたい,そのためには文屋先生に習いたいとの思いでドイツに渡り,ヴュルツブルク音楽大学大学院で1年,ベルリン国立歌劇場管弦楽団オーケストラアカデミーで2年過ごし,そのままドイツに残り他のオーケストラのオーディションを受験する選択肢もありました。

ただ,ドイツで過ごす内に,ここで得た経験を日本のクラシック界の発展に活かしたいという思いが強くなり,ベルリン国立歌劇管弦楽団オーケストラアカデミーでのインターン期間が満了したことで,帰国しました。文屋先生に報告に行ったときには怒られましたけどね。

インタビュアー:岩田小桃(弦楽専攻4回生*),森光惇友(弦楽専攻3回生*)*取材当時の学年

(取材日:2019年12月25日・本学音楽研究棟にて)

Profile:瀬 泰幸【せ・やすゆき】読売日本交響楽団コントラバス奏者

1984年京都府生まれ。2007年京都市立芸術大学音楽学部弦楽専攻卒業。同年,ヴュルツブルク音楽大学大学院(ドイツ)入学。2008年からベルリン国立歌劇場管弦楽団オーケストラアカデミーに入団し奨学生として研鑽を積む。2014年から読売日本交響楽団のコントラバス奏者。これまでにコントラバスを西口勝,吉田秀,文屋充徳,クリストフ・アナカー,アクセル・シェルカの各氏に師事。