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瀬 泰幸さん 4/4

4. 目標に向かってまっすぐに

interviewer_music帰国後,すぐに読売日本交響楽団に入団できたのですか?

 それが,入団までに2年を費やしました。オーケストラの本場,ドイツで3年間充実したコントラバス生活を過ごせたので,日本でもやれると自信を持って帰国したのですが,現実は厳しかったです。国内の様々なオーケストラのオーディションを受験しましたが,なかなか認めてもらうまでには至らなかったです。

先ほども話したように,30歳までにオーケストラに入団できなければきっぱりあきらめるつもりで学生時代から必死で取り組んできたので,29歳で読売日本交響楽団のオーディションに合格した時は,最高に興奮しました。

30歳までに入団するんだという強い思いが,合格を引き寄せたのかなと思います。やはり明確な目標を持ち,やりきることが重要だと思います。

とは言っても,実はオーディションに合格できない2年間に,何度もくじけそうになりました。その時に励ましてくれたのが,京都芸大の仲間でした。一緒にコンサートに出かけたり,食事に行ったりすることで,気分が晴れ,次のオーディションに臨めました。一生付き合える仲間がいることは本当にありがたいことです。

interviewer_music受験生に向けてのメッセージをお願いします。

 京都芸大は,すべての面で環境に恵まれています。少人数制で学生同士の仲がいいのは当然ですが,お互いが高いレベルで切磋琢磨でき,成長し続けることができます。それに,これまで先輩方が築き上げてきてくれた伝統や,豊富な経験が在学生に引き継がれていることも,京都芸大の大きな強みだと思います。その一方で,自由な雰囲気もあります。

京都芸大で過ごす時間は,本当に自分が目指すべき道を見つけるために,自分と向き合うことができる有意義な4年間になることを保証します。

interviewer_music在学生へのアドバイスをお願いします。

 在学中に「自分を見究めること」が大切かと思います。たっぷり与えられた時間の中で,自分の心と体に耳を澄まし,時には寄り道も楽しみながら,自分を見究める時間を過ごして欲しいと思います。

人は自分のやりたい事をやりたいようにする時,とてつもない力を発揮すると思います。自分はどういう音が好きなのか,どのような音楽家になって,どのように人生を歩いて行きたいのかといったことを出来るだけ専門的に煮詰めていって欲しいと思います。

また,先生からレッスンで教わるのは1つの完成されたものですが,自分の体が得意とする事とそうでない事は必ずあります。自分の体をよく研究して,技術的な試行錯誤にも明け暮れて欲しいです。そうやって自分の心と体を動かして得たものを何よりも大切にして下さい。

インタビュー後記

岩田小桃(弦楽専攻4回生*)*取材当時の学年

私たちコントラバス専攻生にとってプロのオーケストラでご活躍されている瀬さんは憧れの存在でした。そんな瀬さんのお話を卒業目前にしたこのタイミングで聞くことができて本当に良かったです。今回のインタビューを通して,大きな壁にぶつかったとしても,自分を信じて迷いなく突き進んでいく瀬さんの生き方に私は感銘を受けました。

対談中に何度も繰り返しておっしゃっていた「かけがえのない1人」を目指して,私も瀬さんのような音楽家になりたいです。

森光惇友(弦楽専攻3回生*)*取材当時の学年

インタビューを通して,プロのオーケストラで現在ご活躍されている瀬さんとお話しできたことは貴重な体験でした。明確な目標を持ってひたむきに努力することで,自分の望んだステージに到達した瀬さんの京都芸大を志した頃から現在までのお話は,私自身と似ている部分もあり非常に参考になりました。瀬さんがおっしゃっていたように,京都芸大は豊かな環境の中,自分のペースで音と向き合える良い場所だと私も感じるので,その良さを生かしながら自分の目標に向かって努力していこうと思います。

(取材日:2019年12月25日・本学音楽研究棟にて)

Profile:瀬 泰幸【せ・やすゆき】読売日本交響楽団コントラバス奏者

1984年京都府生まれ。2007年京都市立芸術大学音楽学部弦楽専攻卒業。同年,ヴュルツブルク音楽大学大学院(ドイツ)入学。2008年からベルリン国立歌劇場管弦楽団オーケストラアカデミーに入団し奨学生として研鑽を積む。2014年から読売日本交響楽団のコントラバス奏者。これまでにコントラバスを西口勝,吉田秀,文屋充徳,クリストフ・アナカー,アクセル・シェルカの各氏に師事。