1. センター概要

芸術資源研究センター(以下,芸資研)は,2014年4月に京都市立芸術大学(以下,京都芸大)に設置された研究機関である。芸資研は,京都芸大及び京都の芸術作品や各種資料等を芸術資源として包括的に捉え直して,将来の新たな芸術創造につなげることを目指している。2017年度は,所長を筆頭に,専任研究員1名,兼担教員3名,プロジェクト・リーダー18名(うち3名再掲),非常勤研究員6名,特別招聘研究員4名という体制で研究活動に取り組んでいる。英語名称はArchival Research Centerであり,学内では構想段階から発足直後までARCと呼んでいたが,現在では芸資研という略称を用いるようにしている。

2. センター概念図

センター概念図

3. 基礎研究

基礎研究とは,センターの活動の基礎となる研究で,以下の3つの研究からなる。

(1)アーカイブ理論の研究

アーカイブとは,従来の公文書館から芸術表現の方法まで,様々な意味で用いられている。芸資研では,芸術及び芸術大学におけるアーカイブの可能性を検討し,その理解を深めるために,識者を招いたアーカイブ研究会を随時開催している。

(2)芸術資源の調査収集と活用

芸資研は,京都芸大が所蔵する芸術作品や各種資料を中心に芸術資源を調査し,創造的に活用する予定である。芸資研は発足したばかりなので,収蔵庫も収蔵品・収蔵資料も持っていない。芸術資料館や附属図書館と連携しつつ,学内各所に点在する芸術資源の目録作成を進めると同時に,将来的には京都を中心とした学外の芸術資源も含めて,その創造的な活用を推進したいと考えている。

(3)アーカイブの教育の場での活用

アーカイブの発想や方法は,芸術教育においても有効である。芸術家は,芸術作品によって構成される芸術の歴史を踏まえて制作してきたが,現代の芸術家が制作時に向き合う多様な情報環境は,芸術作品に限定されない資料や情報を含んだアーカイブに例えることができる。現代社会にふさわしい創作能力を育成するために,アーカイブの発想や方法を芸術教育に取り入れたいと考えている。

4. 重点研究

重点研究とは,多様な専門分野をもつ学内外の研究者が時限的に推進する研究で,プロジェクト・リーダーが中心となり,一人もしくは数人の研究者からなる研究チームによって実施している。現在,以下の研究を行っている。

オーラル・ヒストリー

芸術関係者に聞き取り調査を行い,オーラル・ヒストリー(口述資料)として記録・保存,研究する。京都における本学ゆかりの作家を中心に,戦後日本美術,京都画壇,フルクサスに焦点を当てる。

記譜プロジェクト

楽譜研究の手法を基盤にして,日本の伝統音楽や民俗芸能,西洋音楽の記譜法を研究すると同時に,作品や創作プロセスも含めて記譜法を広く捉え直すことで,記譜を新たな芸術創造の装置とみなし,その表現の多様性を探る。

富本憲吉アーカイブ・辻本勇コレクション

本学に日本初の陶磁器専攻を創設し,教授,学長を務めた富本憲吉の書簡資料等の寄贈を辻本勇氏より受けたことを踏まえ,「富本憲吉アーカイブ・辻本勇コレクション」として整理,活用を図る。

森村泰昌アーカイブ

名画の人物や著名人に扮する作品で知られる,本学出身の現代美術家である森村泰昌に関する文献資料のデータベースを構築して活用する。

総合基礎実技アーカイブ

美術学部の新入生全員が各専攻に分かれる前に受講し,分野を横断する柔軟な基礎力の育成を図る授業「総合基礎実技」の課題と成果を資料化し,芸術教育に新たな展望を開くことを目指す。

うつしから読み取る技術的アーカイブ

「高細密複写」と違い、「写し」や「模写」はその行為を通じ作品の背景を読み解き,技法、素材を後世へと引き継ぐ大事な役割があります。「写し」「模写」を技術,技法,素材から考察し,そのアーカイブの可能性と汎用性を模索します。

京焼海外文献アーカイブ

海外文献等の京焼の記述のアーカイブ化を目的に近世から現代までの欧米での日本の陶磁器関連文献資料を収集し,「京焼」に関わる記述をデジタル化,「京焼文献データベース(仮称)」を構築します。成果は公開し,教育・創作・研究に利活用していきます。

映像アーカイブの実践研究

過去を保存し未来へと継承することはアーカイブに期待される重要な機能の一つです。残されたものの事後の検証・活用に、写真を含む映像が果たす役割や可能性について,実践的な立場で研究に取り組み,ワークショップ等で考察を深めます。

音楽学部・音楽研究科アナログ演奏記録デジタル・アーカイブ化

本学には音楽学部創設以来の貴重な演奏記録が保存されていますが,収録当時の記録媒体は寿命が短く,劣化が著しいものがあります。これらのデジタル化を進め,整備活用のために予備調査を行います。

奥行きの感覚アーカイブ

絵画や彫刻をはじめとするさまざまな芸術作品に感じられる「奥行の感覚」が研究対象です。この感覚の背後には,視覚にとどまらない共通感覚や,複雑な仕方で読み解いている多様な情報や質が存在します。そうしたものを検討・整理,アーカイブしながら「奥行の感覚」の客観化を目指します。

美術教科書コレクションアーカイブ作成

本学美術教育研究会が長年にわたり収集した明治時代からの図画工作・美術教科書は図書館に寄贈され,現在1400冊以上のコレクションを形成しています。美術だけでなく教育や社会の歴史を辿るうえでも非常に重要かつ貴重なこれらの教科書は,経年劣化が著しいため,アーカイブ化し,今後のさまざまな活用に向けての道を拓きます。

ASILE FLOTTANT 再生~ル・コルビュジェが見た争乱・難民・避難~

ル・コルビュジェがデザインした 難民収容船のリノベーションが完成することを機に,「ル・コルビジェが見た争乱・難民・避難」をテーマとした展覧会とシンポジウムを東京で開催します。また,パリのセーヌ川に係留されている船の内部で現代日本建築家展を行い,出版も行います。

みずのき作品群の保存とアーカイブ作成への協力と作業支援

みずのき美術館(京都府亀岡市)による,同館所蔵作品群の保存状況の改善とアーカイブ作成事業(保存の為の再整理作業、画像撮影、作品記録リスト作成、引っ越し作業等)への協力および作業支援を通じて,所蔵作品群,および「みずのき寮絵画教室」,「みずのき寮絵画クラブ」の実態調査を行います。

美術関連資料のアーカイブ構築と活用

名画の中の人物や著名人に扮する作品で知られる森村泰昌(1951-)や,仏教美術,京都の文化,また美術作家の作品や展覧会の記録など幅広く撮影し続けた写真家井上隆雄(1940-2016)らの,各種関連資料のアーカイブ構築と活用について実践的に取り組みます。

現代美術の保存修復/再制作の事例研究
―國府理《水中エンジン》再制作プロジェクトのアーカイブ化

2014年に急逝した國府理(本学美術研究科 彫刻専攻修了)の《水中エンジン》(2012年)の再制作プロジェクトの記録と関連資料のアーカイブ化を行います。また,動態的な作品における「同一性」「自律性」の問題や,作品がはらむ本質的な批評性と「再制作」の関係など,この再制作のプロセスが提起するさまざまな問いについても検討します。

5. 研究組織

センターでは,所長とプロジェクト・リーダーを中心に様々な調査研究に取り組んでいきます。また,センターの研究プロジェクトに大きく寄与する専門家等を,特別招聘研究員(非常勤)としています。

組織図

センター・スタッフ

所長      石原 友明(美術学部教授)
副所長         柿沼 敏江(音楽学部教授)
藤田 隆則(日本伝統音楽研究センター教授)
専任研究員       佐藤 知久
非常勤研究員      石谷 治寛
同           高嶋 慈
同           滝 奈々子
同           竹内 直(日本伝統音楽研究センター非常勤講師)
同           林田 新
同           前﨑 信也

プロジェクト・リーダー 彬子女王殿下
同           井上 明彦(美術学部教授)
同           柿沼 敏江
同           加治屋 健司
同           加須屋 明子(美術学部教授)
同           高嶋 慈
同           高橋 悟(美術学部教授)
同           辰巳 明久(美術学部教授)
同           中ハシ克シゲ(美術学部教授)
同           中原 浩大(美術学部教授)
同           林田 新
同           藤田 隆則
同           前﨑 信也
同           松尾 芳樹(芸術資料館学芸員)
同           森野 彰人(美術学部准教授)
同           山下 晃平(美術学部非常勤講師)
同           山本 毅(音楽学部教授,音楽研究科長)
同           横田 学(美術学部教授)

客員教授・特別招聘研究員  彬子女王殿下
同             森村 泰昌
客員教授          建畠 晢
特別招聘研究員       塩見 允枝子(現代音楽作曲家)
加治屋 健司

(2017年度4月1日現在)

6. ロゴデザインについて

concept

芸術資源研究センター設立時のキーワードである「創造のためのアーカイブ」を形にした。分野を越えて様々な芸術や資料が集められ,相互に出会い,新しい価値や芸術が生まれている瞬間を,いくつもの円の重なりが響き合う部分を切り出すことで表現している。隣り合う重なりの矩形は少しアールを持たせ柔らかい印象とともに,モザイクのように色を変えることで,多彩な芸術が集まっていることも意味している。またこの矩形はいくつも隣り合うことでパターン模様として広がりを持つことも出来,これは,芸資研から,様々な芸術が広がりを持たせながら多様に生まれていくことも期待させてくれる。

舟越一郎(美術学部准教授)

 

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